読書は人間の夢を見るか

平々凡々な社会人の読書と考えたこと。本文・写真についてはCC-BY-SA。当然ながら引用部分等の著作権は原文著者に属します。

256手ルールをめぐる疑問―AIとルールの付き合い方

2017年11月12日に開催された第5回将棋電王トーナメント(主催:dwango公益社団法人日本将棋連盟*1決勝トーナメント第2回戦 shotgun対Yorkieは、257手目に詰みの局面を迎え、先手shotgunの勝利となった。

この局面で問題とされたのが、コンピュータ将棋界におけるいわゆる「256手ルール」である。256手ルールとは、256手を迎えた時点で勝敗がついていない場合には、当該対局を(原則として)引分にする、というものである。当該条項は運営上の都合による手数制限の一種である*2

ところが、当該対局においては257手目の局面が詰みであることを理由として、立会人(勝又清和六段)が先手の勝ちを裁定したことから、視聴者等を中心に批判があった。*3

とりわけ問題とされたのは、(1)前日には257手目に宣言勝ちの局面が現われたにもかかわらず、引分と裁定されていること、(2)負けとなったYorkieは256手で引分というルールに基づきプログラミングされており、より長手数となる手順があったにもかかわらずこれを選ばなかったこと、である。

AIとルールという問題を考えるにあたり示唆される点も少なくないと考え、考えたことをメモしておく次第である。

以下、

 

の3点を論じる。

 

1.判断の時点

当該条項の記述は以下のとおりである。

 

(引き分けの判定)第22条 予選リーグ、決勝トーナメント共に、256 手を超えて、対局が続く場合、立会人がどちらのソフトの負けとも判定せず、千日手でもないときは、その対局を引き分けとする。

*4

 

これは、WCSC27回大会の以下のルール*5をモデルとしていると考えられる。

 手数が256手に達し、審判がどちらのプログラムの負けとも判定せず、千日手でもないときは、引き分けとする。なお、256手目をもって先手プログラムが本条第1項第一号に定める局面になった場合は先手プログラムの負けとする。

 ここで、WCSC27ルールでは、第2文から256手指し終わり時点で判断を行うことは明らかである(2016年12月の改訂で付け加えられた)。

また、電王トーナメントルールについても、(「引き分けとすることができる」ではなく)「256手を超えて、対局が続く場合…引き分けとする」とあることから、ある一時点において判断を行うことは明らかである。また、その時点は、(1)参考としたルール、(2)(「257手以上」ではなく)「超えた」という表記、(3)257手まで指されるとすると先手の有利が拡大する、といった観点から256手指し終わり時点とするのが相当であるように思われる。(256手を超えて、という表記がある以上255手以下や、258手に至ってからの判断とは考えにくい)

この対局の場合、大勢は決しており、確かに257手目で詰みの状態に至ったが、1手詰を発見できない場合も可能性としてはありうる(羽生棋聖も一手詰のところに逃げたことがあるし、コンピュータ将棋が明確な詰みを逃すケースも散見される)。

ここでは、257手目以降の情報は考慮に入れず、256手目時点をもとに判断すべきではなかったか。

 

2.立会人の権限

立会人は裁定の権限として当該条項における「立会人がどちらのソフトの負けとも判定せず」をあげる。しかし、第23条において、立会人による勝敗判定が規定されていることに鑑みれば、当該条項が新たに無条件の裁定権を与えたものとは考えにくい。

23条は以下の通り定める。

(立会人による勝敗判定)
第 23 条
次の各号に掲げる場合、立会人はそのソフトの負けと判定する。ただし、同時に両者がこの条件を満たした場合はその限りではない。
一 将棋のルールに則った指し手が存在しない局面になった場合。
二 累積消費時間が指定された持ち時間に達した場合。
三 ルール上指せない手を指した場合。
四 相手が正当な入玉宣言を行った場合。
五 正当でない入玉宣言を行った場合。
六 LAN 対戦において、CSA サーバプロトコル ver.1.1.3 に規定されない通信を行い問題が発生した場合。
七 5 手目思考開始後、ソフトの終了等により指し手の入出力が不可能となった場合。
ただし、原因が主催者側にある場合はその限りではない。
八 中断後、立会人が指定した局面・手番・消費時間からの再開がスムーズにできない場合。
九 本規程で禁止される行為を行ったと立会人が判定した場合。
通信ケーブルや電源切断等の事故、あるいは対戦サーバの不具合により中断した場合は、立会人が勝敗・引き分け・再戦・途中局面からの再開等の扱いを決定する。
本大会の進行上問題が生じた場合、対戦の途中であっても、立会人が勝敗(引き分けを含む)を決定することがある。
その他、トラブルがあった場合は、立会人が勝敗・引き分け・再戦・途中局面からの再開等の扱いを決定する。

当該対局は、(少なくとも256手時点で)1号から9号には該当しない。

問題となるのは「進行上問題」と「トラブル」条項である。

しかしながら、当該条項は不測の事態を想定したものであろう。であれば、256手ルールを明文で定めている以上、この規定を適用することは許されないと考えられる。

よって、裁定はその権限の上でも、疑問がある。

(ただし、そもそもルールの変更を含めた権限は主催者側にあり、判断自体を否定することはできない)

 

3.今後のルールに向けて

 プログラムは、事前に設定されたルールに基づき設計される。

自動運転車において「トロッコ問題」がクローズアップされるゆえんである。

今回の問題は、事前のルールに対する解釈が、主催者側(257手目以降も続くことがある)、参加者(256手で引分)で異なったことに第一の原因がある。ルールの明確性(立会人の権限も含む)*6やそれに対する合意が必要であるように思われる。

次に、手数として相当か、という問題である。近年のコンピュータ将棋は長手数化の傾向があるといわれ、256手が稀な事例ではなくなってきている。その中で、これを引分の基準とすることを是とできるか(ゲームの質が変わるのではないか)。

最後に(特にトーナメント形式の決勝において)時間節約の手段として適切か、という問題である。元々、運営上の都合(時間節約)で作られたルールであるが、指しつげば終わっている対局のために、再戦する必要が生じる可能性がある。別のルール(切れ負け、相入玉時の特別規定、暫定球的同時対局など)を設けることも考えられるのではないか。

以上の三点は、(1)明確なルールへの合意、(2)プログラムによる常識の変更、(3)ルールの本質への回帰、とまとめられるが、これは将棋プログラムに留まらない点のように感じられた。

人間を超えてまだまだ成長し続ける将棋プログラム。いつも楽しませていただいているけれども、今後一層の発展を期待したい。

*1:第5回 将棋電王トーナメント | ニコニコ動画

*2:世界コンピュータ将棋選手権(WCSC)に関する滝澤武信氏の記述による。電王トーナメントのルールは、WCSCのルールを参考にして作られている

*3:なお、shotgun作者は再戦を主張した。256手ルールが前大会から改変されていた件 | やねうら王 公式サイト

*4:http://denou.jp/tournament2017/img/rule/denou_tournament_rule2017.pdf

*5:http://www2.computer-shogi.org/wcsc27/rule.pdf

*6:正直言ってルールが曖昧で読みにくい部分がある

2017年 流行語大賞トップテン予想

久しぶりですが、流行語大賞ノミネートが出たようなので

流行語大賞評論家の端くれとして、トップテンと受賞者を予想しようと思います。

◎、○、△は順に対象の本命、対抗、穴、です。

(カッコ内は受賞者)

 

◎35億(ブルゾンちえみ氏)

○ひふみん(加藤一二三九段)

△9.98(10秒の壁)(桐生選手)

・インスタ映え(MOYA氏(カリスマインスタグラマー))

・ユーチューバー(ヒカキン氏(ユーチューバー))

フェイクニュース(平和博氏)

・睡眠負債(NHK取材班)

けものフレンズたつき監督)

・ワンオペ育児(藤田結子明治大学教授)

・忖度()

 

講評

分野別で考えてみると、政治・社会関係が多い。

今までの傾向を見ると、

・芸能

・スポーツ

・社会(IT)

・政治

・学術(メディアを通じた流行含む)

といったいくつかの分野ごとに複数個ずつ選ばれるものと考えられる。

 

この中で、スポーツは、9.98の一択。

近年スポーツ選手の大賞受賞が多いが、穴に留めた。

 

IT・社会では、インスタ、ユーチューバーが強そうだが、SNSかぶるか。

なんとか総研の人が受賞者となることも考えられるが、

ここは、一般人のカリスマを推したい(二人ともググった)。

社会現象として、ポスト真実フェイクニュースは入りそう。

受賞者が難しいが、個人的には平和博氏を推したい。

(GoHooの楊井人文氏、法政大学の藤代氏などもいるか)

働き方改革は、受賞者を想定すると悲しい気分になるので、外した。

ほかにはプレミアムフライデーあたりか。

 

睡眠負債、ワンオペ育児あたりはなんとなく感性。

学術要素がありつつ、昨今の風潮・社会問題を表現しているように感じられる。

上の働き方改革、プレミアムフライデーあたりのほか、うつぬけと入れ替わりそうな感じもある。

 

芸能関係では、お笑い物とそれ以外がある。

35億と空前絶後は迷ったが、周辺でよく聞くのは前者。

今年は将棋ブームが印象的だったこともあり、一語は入りそう。

大賞狙いでは顔のある言葉が強そうなので、「ひふみん」を推した。

けものフレンズは願望交じりである(見てない)。

 

難しいのは政治もので、読みにくい。

メディア的な流行という意味では、忖度、ちがうだろー、アウフヘーベンあたりか。

マイナス語が多く、受賞者選びも難しいか、ということで下位に入れた。

 

上三つあたりは、トップテンには入りそうだけど、

正直全く予想に自信がない

15年の時の予想はこちら。ノミネートが減ったり、かぶり語があるの見ると、

選定に苦労がうかがえますね。

流行語大賞を予想してみた。 - 読書は人間の夢を見るか

 

航空機内で障害者席は決まっているか

もう、この話も終わりにしたいのですが、少しだけ。とりあえず、叩くために、あるいはできない理由を探すために、なんかあらさがししたりするのはやめませんか。このエントリも航空会社側を批判するためのものではありません。

多くの人が、自由に生活できるための妥協点はどこなのかな、というのを検討するためのものです。

 

バニラ航空、奄美路線での搭乗拒否「階段昇降のできない人は乗れません」

 

はい。この件です。

ラジオでも、解決して良かった事例として紹介した、とおっしゃってましたし、なんの問題もない話だと思いますが、気になる点が残ったので。

 

車いすで飛行機に乗る時は | いすみ鉄道 社長ブログ

車椅子の場合は席が指定されるとの指摘があるのに対し、当事者からは、とりわけ決まっていないはず、との声があったからです。

 

 1.事案の整理

整理します。

下肢に障害をもち車椅子を利用するA氏が関西空港奄美大島*1航空機を利用したところ、奄美大島空港ではタラップでの乗降で、昇降器具なども用意されていなかった。

往路は車椅子を持ち上げる形が許されたが、復路では社内規定上禁止であるとされ、歩けない人は乗れないと断られた。(腕の力で登った点については重要ではなく、腕の力で登ることも否定された=「歩けないこと」を理由に断られたことがポイント)

到着後、関係機関に申し入れを行い、奄美大島空港の当該路線に昇降器具が備え付けられることとなった。

なお、事前連絡*2が推奨されていたものの、歩行できない者から事前に連絡があった場合には利用を拒絶していた*3。(加えて当たり前ですが、復路ですので、利用があることは当然に想定できたはずです)

まとめると、

  • 利用できた!良かった!状況も改善された!
  • 本件で問題になったのは乗降であって、内部の席の配置ではない。
  • 特別な配慮は求めていなかったし、乗降も同行者グループで行おうとしたが断られた。

 

2.障害者は座れる席が制約されるか

というわけで、本件とは全く関係ないのですが、上記の件について検討します。

まず、航空会社が乗客の安全に配慮する義務、これはあります。それも付随的なもの(機内食とかみたいな)でなく、運送契約の中心的な義務とされています*4

今回の件でも、90秒ルール、というのに言及される方がいました。非常事態になったとき、90秒以内に脱出できないといけないんだ(だから、障害者を入れられない)。あります。日本では、航空法に基づく下位規定の中に「すみやかに脱出できるような設備を有するものでなければならない」(航空法施行規則附属書第1)、「90秒以内に脱出すること」(耐空性審査要領第Ⅲ部4-7項)などが定められています*5

でも、これ基本的には、航空機の耐空証明のルールです。そういう構造にしなさいよーってことです。「90秒以内に乗組員と乗客(実演するときの、老若男女そして幼児の構成比率も規定されている)全員が脱出できることを実演により証明すること」*6や、裁判例において(脳性麻痺により言語障害と両上肢及び両下肢に機能障害がある原告に関し非常事態における援助が)「例えば高齢者や児童あるいは下肢のみの障害のある人とどれほどの差異があるのか疑問」(大阪高裁平19(ネ)2425号, 平20.5.29)と指摘されているところからすると、これを排除の論理として使うのもどうなのかなあ、と思うところです(つまり、一定は予定されており、それを想定したうえでオペレーションが考えられていなくてはならない)。

 

次に、座席の指定についてです。

まず、非常口前。これは有名な話ですが、通達のレベルで限定があり、避難誘導ができないと座れないことになっています*7JALの契約約款を見ても、その座席をとった場合には変更ができるようになっているようです*8。このこと自体は、合理的な措置であると考えます。

 

では、それ以外の席はどうでしょうか。この約款を反対解釈すると、それ以外の席についてはどうしてもここ、というのはないように思われます。

鳥塚社長は、窓際に(法令上)決まっているようにおっしゃっていましたが、こちらの団体のページ(障害者の航空機利用の現状と課題)をみますと、今はどちらでも座れますよ、ということになってきているようです。実際、案内のサイト*9を見ても特段の指定はないように思われます。

少なくとも、物理的な意味でどの席でなくては、ということが決まっているわけではなさそうです*10

 

3.搭乗の上限と事前連絡

さてここで、一つの飛行機に乗れる障害者に上限があるのか、事前連絡が必要か、という点にも触れておきます。難しいです。よくわかりません。結局のところ、場合によりけり、ということになるでしょうか。

 

上限については、決まりがあるか、という意味だと、内規のレベルになってしまいそうで、わかりません。6-10人としている会社が多く、当事者側からも妥当とみなすものがあるようです*11。ただ、例えばパラリンピックのチーム移動とかはどうしているのかな、という疑問もあります*12

一つの参考として米国の連邦規則集(CFR)*13を見ると、上限をつけてはいけないことが明示してあります*14

上限をつけるということは(特に活動的な人が増えれば)、行動の制約を受けるケースが増えるということですから、徐々にキャパシティが拡大してほしいな、とは思います。

 

事前連絡について。これはもう少し複雑です。

これも、CFRを参考にしてみます。

CFRでは、事前の連絡を求めることを原則として禁止しつつ*15、限定的な場合にのみ72時間又は48時間前までの連絡を求めることを認めています*16。そして、連絡がなかった場合であっても、合理的な配慮が求められることには変わりありません。

 

一方、原則論として言えば、安全上の理由による契約解除は認められています。このときに、(特別な配慮が必要であることなど)事前の連絡がなかった場合には、搭乗拒否などの理由となりうるということのようです*17

事前連絡があった場合には、どうでしょうか。必要な準備をし、介助者が必要なら要請することになります*18。一定の場合には、連絡を取っておくことが双方の利益になる可能性が高そうです。

 

ただ、その「一定の場合」のラインをどこにひくのか、というのが問題なのです。

障害者手帳を持っているから?車椅子だから?

では、お年寄りや子供は。昨日から腰が痛くて動きが鈍い人や足が遅い人は。

連絡一本じゃないか、と言われますが、日常のあらゆる場面で連絡しなければいけないことを考えてみてください*19

以前にも書きました*20が、「迷惑」はひとそれぞれ。

どうしても無理、という限界を偏見のない目で考えて、みんなが自由に活動できるようになればいいな、と思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:なお、関空奄美便は当該航空会社のみ(グーグル調べ)だが、伊丹はある。当時者は、LCCは安いので、友達を誘いやすいということを言っていた。実際、旅行することを考えると障害者本人以外の周囲の人のことも考える必要がある

*2:車椅子ユーザーの家族として言えば、多くの場面で事前連絡が「推奨」されていると感じます。ただ、連絡したところで暗に断られることもありますし、逆に準備しますといってやってもらうことが明後日の方向だったり、現場には伝わっていなかったりということもあります。

*3:車椅子客、自力でタラップ上る…昇降機なく - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュースバニラエア、車いす客がタラップ自力で上がる 奄美空港 

*4:松井和彦「身体障害者の単独搭乗の拒否と航空会社の責任」『判例時報』2039号, pp.174-177. 後掲大阪高裁平19(ネ)2425号, 平20.5.29民7部判決に関する解説で、欧米の法制も紹介されている

*5:池内宏『航空法―国際法と航空法令の解説―』成山堂書店, 2016, p.103-104を参照した。なお、ICAOのAnnex8 airworthiness of aircraftにも同様の記述があり(90秒とは書いてない)国際的なルールということでしょう。

*6:非常脱出90秒ルール(ひじょうだっしゅつ90びょうるーる/ひじょうだっしゅつきゅうじゅうびょうるーる)とは - コトバンク

*7:運航規程審査要領細則http://wwwkt.mlit.go.jp/notice/pdf/201209/00005942.pdf

*8:JAL国内線 - 国内旅客運送約款

*9:例えば、[おからだの不自由なかたへの空の旅へのお手伝い]歩行の不自由なお客様へ|ANA 非常口の禁止とひじ掛けが上がらない席の注意があります。

*10:なお、チラッと見ただけのうろ覚えですが、先に上げた裁判の下級審判決(神戸地方裁判所尼崎支部平成16年(ワ)1217号, 平成19年8月9日)を見ると、某社内規のレベルで、ある型の飛行機について、通路側7名までとしていたとの記述があります。誘導の仕方に関する各社の姿勢を反映したものであって、法令レベルで決まったものではないのではないかと思います。

*11:障害のある人の航空機の利用等に関する問題点

*12:以下で紹介されてる海外事例でも、団体行動の場合に事前連絡が求められるケースがあるとのことで、一定数以上の利用も想定されているということではあると思います。 バニラ航空、奄美路線での搭乗拒否「階段昇降のできない人は乗れません」

*13:関係部分はこのあたり、14 CFR Part 382, Subpart B - Nondiscrimination and Access to Services and Information | US Law | LII / Legal Information Institute また、米国では、Air Carrier Access Act 1986というのがあって、解説なども用意されているのでそのあたりも見てみると発見がありそうです。Air Carrier Access Act | US Department of Transportation

*14:14 CFR 382.17 - May carriers limit the number of passengers with a disability on a flight? 10人以上の団体利用の場合は、事前連絡を求めることが認められている。後掲14 CFR 382.27(c)(6)前掲注の海外事例はこのルールに則ったものといえるかもしれません。

*15:14 CFR 382.25 - May a carrier require a passenger with a disability to provide advance notice that he or she is traveling on a flight?

*16:14 CFR 382.27 - May a carrier require a passenger with a disability to provide advance notice in order to obtain certain specific services in connection with a flight? 例えば、医療用酸素を使用する場合は72時間前の連絡。車椅子と関係するところでいえば、上述の10名以上のグループ。60席以下の飛行機における電動車椅子。バッテリー。60席以上でかつアクセス可能な化粧室を持たない航空機における機内車椅子の提供。

*17:松井 前掲注(4)いずれにしても、拒否が正当である、というケースは相当程度に限定されている。前掲の裁判例でも、事前連絡がなく判断する時間がなかったことから、不法行為等は否定された(損害賠償は認められなかった)とはいえ、上肢・下肢に障害がある方であっても(しかもこのケースは裁判例としてはリーディングケース=判断基準がなかった)、「特別の援助」が必要な場合には当たらない(契約を解除できる場合にあたらない)とされた。

*18:米国では、介助者の必要性について乗客と航空会社の見解が異なる場合には航空会社の見解が優先されますが、介助者分の料金は無料とされます。

*19:関連して障害の社会モデルについてググってみてほしい。誰もに優しい社会をいっしょに――「障害者の権利に関する条約」批准に寄せて / 青木志帆 / 弁護士 | SYNODOS -シノドス- | ページ 2

*20:公共マナーはもはや鉄板の炎上ネタということでもあり、特につっこまないことにしている。 - 読書は人間の夢を見るか

棋譜中継の権利再考(追記)

はじめにお断りしておくと、本稿は論点をいくつか挙げることによって、賢い人が何か教えてくれるのではないかという期待に基づくものであり、この文章を読んだ行動によるいかなる行為に対しても責任を負いません。また、私見であって筆者の属する組織の見解とは無関係です。

 

さて、新星・藤井聡太四段の登場によって、将棋界が盛り上がっています。

人が集まってくれば、それだけトラブルも起こりやすくなるというものです。

先日、藤井四段も登場した朝日杯に関連して、以下のようなTwがありました。

 

 

1.著作権をめぐって

棋譜の権利、とりわけ著作権、については、これまでも様々な場面で議論が提起されてきました*1

 

棋譜著作権の観点から論じる、というのは古くから見られます。 

例えば、1978年に観戦記者の奥山紅樹氏が、本当に棋譜著作権があるのか、と問題を提起し、それに対して、木村義徳七段(当時)が批判的に応答する、ということがありました*2

発端となったのは、将棋連盟の地方支部を中心として発行していた『将棋あおもり』(『将棋天国』)の編集後記。プロの対局譜はかなりの金額を連盟に支払わなければならないから、対局譜は以後掲載しない、との趣旨が掲載されたことにあるようです(それ以前にも関係書籍の出版等で問題があった)。同好の士による勝手中継、という意味では、現在の問題に通じるところがあるかもしれません。

奥山氏によれば、当時、棋譜をめぐる公式の見解はだされておらず、あいまいなものだったようです*3

そのうえで、そもそも棋譜著作権が成立しうるのか、その場合、引用や観戦記等はどのような扱いになるか、著作権があるとすれば定跡はどうか、等の論点が示されました。

一方、木村七段の反論は、棋譜には金銭的価値が発生しているということを根拠に立論するもので、著作権の細かな論理に立ち入ったものではありません。ただ、ここでも一定規模以下の同人誌からは金銭を取らなくてもよいという議論や、取らない場合があったという事実が示されています*4

また、奥山氏・木村七段の論争の後には、国会でも棋譜著作権に対する質疑が行われ、犬丸直文化庁長官(当時)が著作権が認められる場合がありうる旨答弁しています*5

 

さて、著作権とは何でしょうか。

著作物、すなわち「著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(「著作権法」(昭和45年法律第48号))に認められる、著作者の権利のことです*6

ここで、重要なのは、「創作的に表現」という点で、単なる事実そのものや、アイデアに留まることがらなどは、著作物とは認められないと考えられています。

ここで、棋譜についてみると、これは、将棋の対局そのものが、勝利を追求したものであり、その一局面を決まった方法で記録したもの、つまりは、事実の記録物で創造性はありません*7。このように、著作権は認められなそうに思えるのですが、著作権法の起草にかかわった加戸守行氏は、棋譜を「共同の著作物」と解しているようで*8。油断はできません。*9

 

2.著作権以外の可能性

 さて、仮に棋譜著作権が認められないとして、勝手に中継したり、転載したりしてもよいものでしょうか。

ほかの権利を考えるにあたって、スポーツの放映権との関係を考えてみましょう。

中継映像に著作権が認められるほか、スポーツの放映権は、成文法には存在しませんが、その根拠を、(1)施設管理権、(2)選手の肖像権に求める見解があります。*10

将棋の場合、(1)の施設管理権が問題になるケースは少なそうです。

公開対局で目の前で行われるような場合にその中継を禁止することは考えられるでしょうか。また、解説会などとは関係が深そうです。

(2)の肖像権についても、棋譜に直接写真を添付する場合などを除いて、問題になるケースは少なそうです。

 

次にパブリシティ権というものも考えられます。

パブリシティ権というのは、その人の名前などにくっついている経済的価値を守るための権利です*11棋譜には、棋士の名前等がふされることが多いですから、これが差別化の要因と考えられるかもしません。ただし、基本的には、これまでの議論では商品化の話なので、勝手中継に適用できるかは難しい部分もあります*12

 

ところで、(独占)放映権は特定の人と人との約束によって生まれる権利・義務の関係です(債権)。こういう場合であっても、第3者の利用によって、独占性が侵害されれば、財産上の利益が侵害されることになりますから、損害賠償の請求が認められる可能性があります(不法行為*13

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 Photo via Good Free Photos

 

現に、Magnus Carlsen対Sergey Karjakinの対局に際し、主催のAgon Limitedが第3者による棋譜中継に対する事前差止請求を行ったところ、これは認められなかったものの、裁判官から当該案件がNBA v. Motrola*14に比されるものであって、損害賠償請求は認められうるという指摘があったようです*15

 

と、このように、棋譜そのものに著作権が認められないとしても、何らかの法的に保護されうる権利・利益の侵害にあたる可能性があるかもしれません。

また、そうでなくても、勝手中継は共有地に羊を放し飼いにするようなもの。

自分一人は大丈夫、と思っているうちに草木枯れ果て、スポンサーは撤退、棋戦は見られず、なんてことになってしまうかもしれません。自戒をこめながら、そのようなことが現実にならないことを願うとことです。

 

他方、連盟の側にも幾らか求められることがあるかもしれません。

1978年当時、連盟の収入増加策に発想の飛躍があり、社会に対する発言・行動が変わっていることを喜ばしいとしつつ、奥村氏は言います。

「連盟が堂々と記者会見でもしてその信を社会に問い、議題によっては棋士総会も公開し、社会との接点を太く豊かにしながら方針を打ち出していくことが今後この種の問題には欠かすことができないと思われます。でなければトラブルは増幅するばかりでしょう」*16

ブームの陰に、忘れられない問題がいくつか残っていることは確かです。

ファンの一人として、連盟が社会に議論を開くことを望みたいと思います。

 

追記

知的財産法を専門にされている神戸大学の島並良先生が以下のようにコメントされています。 *17

 

 

 

上であげておいた事柄はあながち的外れでもなかったでしょうか。

先生が挙げられている北朝鮮映画最高裁判決*18とは、放送局が北朝鮮の劇映画を無断で2分強放映したことに関する裁判です。

著作権法では、条約で保護の義務を負う著作物も保護の対象とされており、北朝鮮も加入しているのですが、国家として承認していないので、北朝鮮の著作物については国内で保護の対象とならないとされました。そこで、著作権だけでなく、利用許諾権の侵害を理由に損害賠償を求めました。

そして、判決の中で「著作物に該当しない著作物の利用行為は、同法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り、不法行為を構成するものではない」とされたのです。

反対に言えば、著作権とは異なる法的に保護された利益があれば、損害賠償請求が認められうる、ということです*19

 

そこで、朝日新聞は「朝日新聞社日本将棋連盟は、主催者として本棋戦の対局における棋譜を独占的に放送し、配信し、その他の方法で利用できる権限を有しており、そうした主催者としての権限は、法律上保護されるべき利益に係る権利」とのコメントを出しているわけです。*20

 

なぜ、上で将棋連盟がオープンにしてほしい旨書いたかといえば、

1.なんでスポンサーが矢面に立っているのだろう、という不可思議のほかに

2.棋譜の公開を通じた普及にとってどうなのか、という点があります。

将棋連盟の定款*21では、事業の第1として

棋戦を主催し対局棋譜の提供及び棋戦の解説講評等を行い、将棋の普及
啓発を推進する

があげられています。

棋譜の利用についてどこからどこまで許されるのか、許されないのか、という点をあいまいにする(すなわち、本来可能な利用も難しくする)のではなく、どこからどこまでが許されていないのか、を明確にすることこそ、普及啓発に資するのではないかと考えます。(全部の同時配信が許されないにしても、後日ではどうか、一部では、局面図ではどうか、など。局面図が許されない場合、性質上これについて語ることも難しくなるように思われます)

 

*1:機械学習等との関係でいえば以下など。将棋の棋譜には著作権は存在するのか? | やねうら王 公式サイト。なお、棋譜の権利については、リアルタイムか、事後か。公開対局を対局場で採譜したものか、中継の棋譜か、など場合分けが必要な部分があるかと思いますが、ここではリアルタイムで中継の棋譜を再入力したものを中心に検討します。

*2:奥山紅樹「78棋界スケッチ この一年の回顧によせて」『近代将棋』1978.12, pp.192-198; 木村義徳棋譜著作権をめぐって」『近代将棋』1979.2, pp.238-241.

*3:取材による感触として、棋譜には著作権が成立し、棋士はこれによって生計を立てなければならないから、当該棋士と契約を結ぶべきである、との見解が示されている。一方で、お隣囲碁界では1976年に日本棋院が「著作権を確立する運動と勉強をする専門委員会」を設置している(「棋界」『読売新聞』1976.6.27.あいまいさは続いていそうです日本将棋連盟による「棋譜の著作権」の主張について - 勝手に将棋トピックス。)。現在も、囲碁界のほうが積極的に棋譜著作権を主張しているようである。はいけいとして、将棋は将棋連盟で出版している雑誌が主であったのに対し、囲碁界ではそうでなかった、ということがあるかもしれない(「読者と編集者 棋譜の「禁転載」」『読売新聞』1961.3.30. 囲碁欄にだけ禁転載とあるのはなぜか、との読者投稿への回答。著作権は確立しておらず、掲載権を売られているものだが、その内容に取り決めがない、とも。)。

*4:当の『近代将棋』もしばらく棋譜掲載料を取られていなかった

*5:棋譜というものは、やはりそこに対局者の独創性というものが出てくる場合が多いと思います。やはり一種の知的創造物であるという場合が非常に多いと思いますので、そういうものであるということがはっきりすれば、これは著作権の対象になり得るものであろうかと思います」( 第91回国会 衆議院文教委員会会議録 14号
昭和55年5月7日, p.13.)

*6:なお、著作権については以下の連載がわかりやすいです。著作物の範囲については1-3回など。特集 : 18歳からの著作権入門 - CNET Japan

*7:渋谷達紀『知的財産法講義Ⅱ[第2版]』有斐閣, 2007, p.24; 「棋譜著作権 ネットなどで出回り問題に」『毎日新聞』2011.3.15, 夕刊(福井健策弁護士のコメント。ただし、勝利を追求しない(=美学による)手について、フリージャズセッションを再現した楽譜のようなもの、とみてハードルは高いとしながらも著作物性を認める余地を残している).

*8:加戸守行『著作権法逐条講義[六訂新版]』著作権情報センター, 2013, p.120.

*9:なお、欧米におけるチェスについては、著作権を認めないことになっているようです。Tom Platt"Stalemate Over Chess Broadcast Rights"<https://www.gtlaw.com.au/file/12648/download?token=i_xErvJX>

*10:國安耕太「スポーツ中継映像にまつわる著作権法の規律と放送権」『パテント』2014.4, pp.77-88.

*11:パブリシティ権について以下を参照した。結城大輔「裁判例に見るスポーツとパブリシティ権」『パテント』2014.4, pp.55-65.

*12:藤井四段クリアファイルを勝手に作る、とかは当てはまるでしょうか。一方、藤井四段熱戦譜とかは微妙な感じもあります(中田英寿事件参照中田英寿事件(第1審)(パブリシティ権の判例4) | 尾崎法律事務所

*13:國安 同上のほか、Masahiro Ito/伊藤雅浩 on Twitter: "(公開対局ではない)対局について棋譜中継をした場合,著作権等の知的財産権侵害という構成は難しいかもしれないが,法律上保護される利益を侵害するとして不法行為になる可能性は十分ありますね" ただし、差止請求までは認められない

*14:ひとまずウィキペディアで。National Basketball Ass'n v. Motorola, Inc. - Wikipedia

*15:Platt op. cit.(9)

*16:奥村 前掲注(2)

*17:これ以外に指し手ないし一局の将棋そのものの著作物性についても論じられています。

*18:判決文はこちら.http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/813/081813_hanrei.pdf

*19:山根崇邦「著作権法による保護を受けない情報と不法行為法[北朝鮮事件:上告審]」『著作権法判例百選[第5版]』, pp.228-229.

*20:将棋実況YouTuberに朝日新聞「権利侵害なので中止を」、何の権利侵害なのか? - 弁護士ドットコム ちなみに不法行為については民法709条で以下のように定められています。「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」

*21:https://www.shogi.or.jp/about/doc/26_teikan.pdf

ドイツ:ソーシャルメディアに対する法執行の強化(2017/4/19一部更新)

ドイツで、フェイクニュースを取り締まる法案が提出されるのではないか、ということで、大変大きなニュースになっております。

ドイツ うそのニュースに最大約60億円罰金の法案 | NHKニュース

 

読んでみますと、もちろんフェイクニュースを射程に入れたものではあるようなのですが、法律自体はSNS上の法執行の強化、ということを前面に押し出しているようです。

BMJV | Artikel | Verbesserung der Rechtsdurchsetzung in sozialen Netzwerken

少し時間もありましたので、試訳を行ってみました。

(訳のクオリティが低いので訂正していただけるとありがたいです。なお、このほかにテレメディア法の改正と施行期日に関する規定があります)

 

 簡単にまとめれば、報道の通り、ドイツ国内において一定以上の規模を有するソーシャルネットワーク事業者に対し、違法情報に対する苦情処理手続を定めさせるものです。 

 苦情処理規定には、明らかに違法な情報を24時間以内に、それ以外のものでも7日以内に削除又はブロッキングする手続を含むものとされています。また、違法な情報はコピーも含めて措置されるものとされています。

 そのほか、苦情処理に関する報告書の作成の義務や国内に一定の代理人を置く旨も規定されており、これら手続の導入義務、報告義務等の規定に反した場合には最大500万ユーロ(60億円)の過料が科せられるものとなっています。

そういうわけですので、フェイクニュースが新たに犯罪になる、というわけではなく、その流通を効果的に防止するために新たに負のインセンティブなどを設けたものだとおもいます。

 

日本のプロバイダ責任制限法との関係でいうと、この法案は、特定の刑法典上の犯罪に対象が限定されていること、そしてもちろん、新たなサンクションが導入されている点が大きな違いといえます。また、国内で対応が可能であるように代理人を置かせたり、対応する人員については語学的な研修・サポートを行わせるなど、グローバルなプレーヤーへの対応、という観点も強く感じたところです(しかし、こういうことするとドイツからのアクセスは遮断(撤退)、とかならないのかと少し疑問に思ったり)。

ドイツにも、プロバイダ責任制限法と同じような意味でテレメディア法というのがありますが、運用上、プロバイダ側に厳しそうなことも多い印象でした*1表現の自由の考え方として「国家による自由」の考え方が比較的強い、ということとも関係しているのでしょうか(あといつもながらにジャーナリズムの特別感)。

 

なお、管見の限りでも、プロバイダ等に対し、何らかの責務を負わせ、これを履行しない場合に罰金等を科す例にニュージーランドの有害デジタル通信法があると思いますが、これは裁判所等の外部の機関の命令を実施しなかった場合の措置であるのに対し、本法案では、自主的な手続が実行されないということ自体に対して過料を科すことができるようにも見えます*2。(この点につき、当初法案では、そのように読めていたところ、法案説明資料中で24時間ないし7日以内の削除等の義務に一度違反したからといって、その構成要件を満たすものではないとされたようです。*3

以上は素人考えであてにならないので、どなたか教えていただけると幸いです。

いずれにしても今後の動向が注目されるところです。

 

--以下訳--

ソーシャルネットワークにおける法執行の改善に関する法律(ネットワーク法執行法)

第1条 範囲
(1)この法律は、利用者が、任意の内容を、他の利用者と交換し、共有し、又は一般に公開することを可能にするインターネット上の営利のプラットフォーム(ソーシャルネットワーク)を有するテレメディアサービス提供者に適用する。サービス提供者自らが責任を負う、ジャーナリズム編集を経て形成された提供物のプラットフォームは、この法律の意味でのソーシャルネットワークとしてみなされない。


(2)ソーシャルネットワークの提供者は、当該ソーシャルネットワークの国内における利用者が2万人を下回る場合には、第2条から第3条までに規定する義務を免除される。

(3)第1項の意味での、違法な情報とは、刑法第86条、第86a条, 第89a条, 第90条, 第90a条, 第90b条, 第91条, 第100a条, 第111条, 第126条, 第129条から 第129b条まで, 第130条, 第131条, 第140条, 第166条, 第184b条, 第184d条, 第185条から第187条まで, 第241条又は第269条の構成要件を満たすものをいう。*4


第2条 報告義務
(1)ソーシャルネットワーク提供者は、そのプラットフォーム上の違法コンテンツに係る苦情の処理に関するドイツ語の報告書で、第2項に規定する内容を含むものを四半期に一度作成し、連邦官報並びに自身のウェブサイト上で、1四半期の終了から少なくとも1月の間公開しなければならない。自身のウェブサイト上で公開された報告書は、容易に見つけられ、直接アクセス可能で、かつ常に利用可能でなければならない。

(2)報告書は少なくとも以下の事項を含まなければならない。
1.ソーシャルネットワークの提供者が、プラットフォーム上における犯罪行為の防止のために行っている各取組の詳述
2.違法情報に係る苦情の送信のメカニズム及び違法情報の削除及びブロッキングのための判断基準の説明
3.報告期間中に受信した違法上に関する苦情の数(苦情相談所*5の苦情、ユーザーの苦情に従った分類及び苦情理由に従って分類)

4.苦情への対応を所掌するユニットの組織、人材の配置並びに技術的及び言語的能力並びに苦情への対応を所掌する人員への訓練及び補助
5.苦情相談機関がこの業界団体に含まれるか否かに関する説明を含む業界団体への加盟状況
6.判断の準備のために外部機関に相談された苦情の数
7.報告期間中に当該情報の削除又はブロッキングに至った苦情の数(苦情相談所及び利用者の苦情並びに苦情理由によって分類されたもの)
8.ソーシャルネットワークにおける苦情の受領から違法情報の削除又ブロッキングまでの時間(苦情相談所及び利用者からの苦情、苦情理由、並びに「24時間以内/48時間以内/1週間以内/それ以上」の期間に従って分類されたもの)
9.申立人並びに当該情報の利用者に対する苦情に関する判断についての通知の措置

 

第3条 違法なコンテンツにかかる苦情の処理
ソーシャルネットワークの提供者は、違法情報に係る苦情の処理について、第2項及び第3項に規定する効果的かつ透明性のある手続きを有さなければならない。提供者は、利用者に対し、違法情報に対する処分に係る苦情を送信するための、容易に区別でき、直接にアクセス可能で、常に利用可能な手続を提供しなければならない。

(2)手続において、ソーシャルネットワークの提供者は以下を保証しなければならない。
1.遅滞なく苦情を承知したことを表明し、情報の違法性及び当該情報が削除又はブロッキングされるべきであるか否かを審査すること。
2.明らかに違法な情報を、苦情を受けてから24時間以内に削除する、又は当該情報へのアクセスをブロックすること(ソーシャルネットワークが所管の法執行機関と明らかに違法な情報の削除又はブロッキングについてより長い時間をとることで合意している場合には適用しない)。
3.各違法情報を、苦情の通知を受けてから7日以内に削除し、又は当該情報へのアクセスをブロックすること。
4.削除の場合には、当該情報を証拠のために確保し、この目的のため、10週の間、国内で保存すること。
5.申立人及び利用者に遅滞なく決定について知らせ、及びその決定に対する理由を挙げること。

更に、プラットフォーム上にある違法情報の全ての複製を遅滞なく削除し又はブロッキングすること。

(3)手続は、各苦情及びこの救済のために採られた国内における措置を文書化することを保証しなければならない。

(4)苦情に係る処理は、ソーシャルネットワークの経営陣によって、毎月の検査を通じて、監督されなければならない。寄せられた苦情の処理において、組織的に不十分であることについては遅滞なく取り除かれなければならない。苦情に対応することを任された人員には、ソーシャルネットワークの経営陣によって、定期的に、少なくとも半年に一度、ドイツ語の語学研修及びサポートサービスが提供されなければならない。

(5)第1項の手続は、第4条で指定する行政官庁によって、認可を得た機関によって監視されることができる。


第4条 過料に関する規定
(1)故意又は過失により以下の行為を行った者は秩序違反として扱われる。
1.第2条第1項第1文に反して、報告を行わず、正確性を欠き、不完全なものであるか又は期限を遵守せずに行う若しくは、正確性を欠き、不完全なものであり、所定の方法ではなく又は期限を遵守せずに公開した者。
2.第3条第1項第1文に反し、国内に居住するか又は本部を置く苦情相談所又は利用者の苦情の処理に係るそこで指定された手続を有さず、又は正確性を欠く若しくは完全でない方法でしか有していない者。
3.第3条第1項第2文に反し、そこで指定された手続きを提供していないか又は正しい方法で提供していない者。
4.第3条第4項第1文に反し、苦情の処理を監督しない又は正しく監督していない者。
5.第3条第4項第2文に反し、組織的な不十分さが改善しない又は期限を遵守して改善しない者。
6.第3条第4項第3文に反し、訓練又はサポートを提供しない又は期限を遵守して提供しない者。
7.第5条に反し、国内登録代理人又は国内受領資格者を指名しない又は期限を遵守して指名しない者。


(2)秩序違反は、第1項第7号の場合には50万ユーロ以下の過料、第1項の他の場合には500万ユーロ以下の過料を科すことができる。秩序違反法第30条第2項第3文が適用されなければならない。*6

(3)秩序違反は、国内で行われない場合においても適用され得るものとする。

(4)秩序違反法第36条第1項第1号の意味での行政官庁は連邦司法省である。連邦私法消費者保護省は、過料手続の開始に際し及び過料額の決定に際し、連邦内務省、連邦経済及びエネルギー省及び連邦交通及びデジタルインフラ省との合意を得て、過料当局の裁量の行使に関する一般的な管理原則を公布するものとする。

(5)行政官庁が、削除されていない又はブロッキングされていない情報が第1条第3項の意味で違法であると判断しようとする場合には、行政官庁はあらかじめ、違法性について、司法上の決定を得なければならない。過料の決定に対する意義に関する決定を行う裁判所は、権限を有する。先決的判決の申請は、ソーシャルネットワークの意見と併せて裁判所に送付されなければならない。申請に対しては、口頭の審理無しに決定を行うことができる。決定は、最終的なものであり、行政官庁を拘束する。

 

第5条 国内送達代理人
ソーシャルネットワークの提供者は、この法律に基づく過料の手続における行政官庁、検察庁及び所管の裁判所並びに民事訴訟手続における所管の裁判所に対する送達のため、国内送達代理人を遅滞なく選任しなければならない。国内法執行機関の情報照会のため、国内受領代理人を選任しなければならない。

 

第6条 経過規定

(1)第2条に規定する報告は、この法律の施行から第二四半期後を第一期とする。
(2)第3条に規定する手続きは、この法律の施行から3月以内に導入されなければならない。

 

*1:ドイツにおけるプロバイダ責任法理の展開 : 危険源の設置者か、有益な表現の場の創出者か : HUSCAP

*2:ニュージーランドの有害デジタル通信法 ―オンライン上の有害なコンテンツに関する包括的規制―」<http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_10016376_po_02680006.pdf?contentNo=1&alternativeNo=>

*3:Heiko Maas: Facebook kann sich entspannen | ZEIT ONLINE

*4:例えば、違憲団体(ナチスとか)の宣伝、侮辱、名誉毀損、犯罪への扇動など

*5:Beschwerdestellen

Internet-Beschwerdestellen - klicksafe.de などを見ると日本でいうインターネットホットラインセンターなどが該当しそう

*6:秩序違反法の当該条文は法人の場合について規定しており、過料上限の10倍を上限とする旨、すなわちこの場合では、法人については上限が5000万ユーロとなる

リズムは続くよどこまでも #GrooveMerchant

新宿の雑踏のなかそびえるビルのホール。

100余りの客席は、満席。

スネアの音が徐々に大きくなり、いきなりのドラムソロ。

Freddie HubbardOn the Que-Teeだ。

細かくリズムを刻むドラムに、ベースとピアノのリズムセクション

その上に、優美なトランペットにサックス。

初めてのアルバムに入れられたスタンダードナンバーに、

メンバーのオリジナルなども演奏されて、その日の2時間はあっという間に過ぎた。

 

ライブが始まる直前、知人の訃報を聞いて混乱していた私を、

彼らのGroove*1が運んで行ってくれた。

「リズムなしには音楽は生まれないという事実は、運動、秩序、均衡などという言葉を超えて、リズムがより根源的な、生命と直接かかわりをもつ力であることを感じさせる」(芥川也寸志『音楽の基礎』岩波書店, 1971)というが、そのリズムがその日以降の私の生命そのものだった。

 

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その日は、アルバムリリース*2を記念した日本ツアーの初日だった。

グループ名はGroove Merchant。

ピアノ、ドラム、ベースに、サックスとトランペットの5人編成。

トランペットのAaron Bahr氏を除けば、日本人*3

いずれも、ニューヨークで活動している。

飛行機に乗ってわざわざ日本までやってきて、車に荷物を詰め込んで、日本各地をまわるのだという。

事実上のリーダー、権上康志氏が語るように、今の時代、ジャズバンド5人で、

ツアーを回るというのは、金銭的にも体力的にも簡単なことではないのだろう。

 

 

それでも、その価値はあった。

何故そう言い切れるかといえば、2週間のツアーを終えた最終日、渋谷会場のライブにも顔を出したからだ。

こちらも7,80ほどの客席が満員。

多少の疲れやかたさを感じる場面がないではなかったのだけど、

音楽は「熟成」されていた。

 

 

細かく分割された、豊かで厚いフレーズを奏でるドラム(小田桐氏)*4。陰に陽に縦横無尽。

パワフルなドラムとの掛け合いを見せたかと思えば、優美なボウイングも見せるベース。権上さんはしゃべりもおもしろかった。

そんな二人と楽しそうに絡んでいた?ピアノの末永氏。オリジナル、You may know.は、遠い異国の地からの郷愁を感じさせた。

前のお二人は、演奏もさることながら、オリジナルの曲がかっこよかった。

Bahr氏の美しい、優雅な曲。他方、三富氏の曲は異文化との出会い、「不可思議さ」が前面に表現されたものだったように思う。

どのメンバーのオリジナル曲も、日本的な旋律を取り入れたり、異文化との出会いを描いたり、していた点が印象に残った。

ほどなく、彼らはNYに戻って活動を続ける。

ジャズミュージシャンにとって、セッションも、バンド活動も両輪のように大切(権上氏)だそうだが、今回のツアーで音楽ができていく過程が経験できたし、課題も見えた。これをファーストインプレッションから発揮できるようにしていきたい(小田桐氏)、という言葉は力強かった。

「生きていくだけでも大変な街」NYでのさらなる活躍を期待したい。

 

グルーヴ・マーチャント(GROOVE MERCHANT)

グルーヴ・マーチャント(GROOVE MERCHANT)

 

 

 

*1:人によってニュアンスが違うみたいだけど、”The “lock” between members of a rhythm section playing well together.”(Mark Levine, The Jazz Theory, 2011.ところで、Merchantって「商人」みたいな意味だと思ってたら「~狂」みたいな意味もあるのね。)と定義するものがあった。

*2:アルバムは後掲。スタンダードナンバーをがっつり。楽しい曲も、しっとりした曲も。

*3:Bahr氏はイケメン。御両親二人ともに日本人の親御さんがいるらしい

*4:師匠?そのラルフ・ピーターソンに似てると言っている人もいた

靴ひもを通してもらったはなし

僕の革靴はボロボロだ。

つま先は傷つき、見事な餃子型になっている。

ビジネスマンは足元から、という人からみれば、

ビジネスマンの足元にも置けないということになるだろう。

いいのだ。ボロボロに擦り切れるまで精一杯。そんな美学もある。

 

それでも、靴ひもが切れては歩けない。

これまでも何度か替えてきたが、経験上、そろそろ切れる。

そう思ったある日、僕は靴屋に向かった。

 

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真新しい靴が並ぶその空間は、なんとなく踏み入れることを躊躇させる。

何とか分け入っていくと、靴ひもをみつけた。

隣には、靴の修理と靴磨きのコーナー。

清潔感のある若いお兄さんが、靴の手入れをしている。

何か言われるんじゃないかと内心びくびくしながら、

ひもを見比べる。

丸ひもか、平ひもか、長さも、いろいろあるぞ。

清水の舞台から飛び降りるつもりで、200円の丸ひもに。

お兄さんに手渡す。

 

「よろしければ、お通ししましょうか」

明るく、優しい声だ。

このボロ靴に、200円のひもなんですけど、いいんでしょうか、

そう思いながらソファーに腰かけ、靴を渡す。

「もしかすると、こちらの300円のひものほうが合うかもしれません。

100円お高くなってしまうのですが…」

そうですか。同じひもに見えますが、でもそうなんでしょうね。

お願いします。

 

お兄さんは、ボロ靴から、丁寧に、

そんな靴をも、いつくしむように丁寧に、ひもを外し、

新しいひもを通してくれた。

そして、僕の渡した500円玉をもって、奥のレジまで走っていった。

申し訳ないことしちゃったな、と思いながらも、

僕はまたこの店に来る時のことを考えていた。

 

明日からまたこの靴を履いて、

丁寧にひもを通そう。

丁寧に精一杯。それだけでもいいのだ。