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読書は人間の夢を見るか

平々凡々な社会人の読書と考えたこと。本文・写真についてはCC-BY-SA。当然ながら引用部分等の著作権は原文著者に属します。

「健康農場」

先日、以下のようなニュースが報じられた。


酒の安売り・飲み放題はダメ…WHOが指針案

 【ジュネーブ=平本秀樹】世界保健機関(WHO)の執行理事会(日本など34か国で構成)は22日、酒の安売りや「飲み放題」の規制など、過度な飲酒を減らすための指針案を承認した。

 WHOは2003年の総会で「たばこ規制枠組み条約」を採択しており、次はアルコールの規制に向けて一歩を踏み出した形だ。

 指針案は、「04年の飲酒に起因する死者数は250万人にのぼり、このうち32万人は15〜29歳の若者だった」と分析。「大酒飲みや若者は価格の変化に敏感」だとして、飲み過ぎや未成年者の飲酒を減らすには酒類の値上げが「最も有効な手段の一つ」と指摘した。

 さらに、定額で無制限に飲酒できる居酒屋などの「飲み放題」や酒類のディスカウント販売の禁止・制限、アルコール飲料の販売促進を目的としたイベントの規制なども提案した。

 指針案は5月の総会で正式採択される見通し。ただ国際条約ではないため、加盟国への強制力はない。
(2010年1月23日10時25分 読売新聞)


近年、「健康」というものが非常に重要視され、様々な規制が行われているように思う。
例えば、平成14年に可決した健康増進法では、受動喫煙の害を理由として、公共の場での喫煙を禁止した。
その一章二条においては、国民に責務として次のようなことが挙げられている。
「第二条 国民は、健康な生活習慣の重要性に対する関心と理解を深め、生涯にわたって、自らの健康状態を自覚するとともに、健康の増進に努めなければならない」
国民は健康の増進に「努めなければならない」。正直大きなお世話だ、と思ってしまう。
確かに、健康でない人間が増えれば、医療費が国庫を圧迫するのかもしれない。
しかし、私たちは「愚行を犯す権利」を持っているのではないか。
健康であるほうがメリットは大きいかもしれない。しかし、それを犯して、何か(タバコ・酒など)をやってしまう。
それが、直接に他者に危害を及ぼすのでなければ、それを容認する。それは基本的な原則ではないかと私は思う。
単に酒が飲めなくなると困る、というだけではない。
私は非喫煙者だが、タバコへの過度の規制は反対だ。
何故か。その答えはこの本に書かれているように思う。


『1984』の著者としても知られるG.オーウェルの書いたSF小説だ。
ゼミで話にあがったので読んでみた。
読んでいる途中に先のニュースにあたり、驚いた。
この小説に書かれていることそのものであると感じたからだ。


『動物農場』は優れた寓話であり、解説などでも、登場人物をひとりひとり歴史上の人物に当てはめてみると言った、試みが行われている。しかし、この小説が描き出したものは歴史の一場面だけではない。
イデオロギー」や「全体主義」の恐ろしさと言ったものをこそ描き出している。
開高が指摘したように、ソ連のみならず、大戦時のドイツに当てはめることができるのはこのためだろう。


そして、今日本にあるイデオロギーの一つが「健康」である。
それをもとに様々な制度が構築されかけている。
国家によって支配されているのではない。
『動物農場』においてナポレオンの支配を助けたのは、「四本脚はよい、二本脚はわるい!」と唱え続けた羊たちではなかったか。