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読書は人間の夢を見るか

平々凡々な社会人の読書と考えたこと。本文・写真についてはCC-BY-SA。当然ながら引用部分等の著作権は原文著者に属します。

世界のGoogle化・・・それでも

1月30日に、日本学術会議講堂で行われた、日本学術会議シンポジウム「世界のグーグル化とメディア文化財の公共的保存・活用」に参加してきた。詳細なレポートについては、kyokashow さんのエントリー「「世界のグーグル化とメディア文化財の公共的保存・活用」のまとめ」をご覧いただくか、@hanawa0925さんのつぶやきを見ていただければ良いと思うので、割愛させていただく。


それでも今日これを書いているのはいくつかコメントしたいことがあるからだ。
まず、グーグル化とはなんなのか、何が問題なのか、ということについてだ。
考えうる話のレイヤーが少なくとも3つは挙げられる。


第一に固有名詞としてのグーグル。
この場合主に問題となるのは、情報の独占ないしは寡占と情報の操作の問題だろう。これについては、多く論じられていることと思う。グーグルによって日常の行動を規定されている面は否めないし、もっといえば「自由を奪われている感覚を剥奪」されたままに、思考をすら規定されていることは十分にありうる。Booksなどのアーカイブを任せることで、情報の流通過程を完全に握ってしまったら・・・怖い面も大きい。


第二に私企業としてのグーグル。
シンポジウムの論点もここに沿って話されることが多かった。情報という公共財の管理を一私企業であるグーグルに任せていいのかという論点である。これに関して言えば、グーグルが法に沿って活動している限りにおいては、これを止めることはできないので結局のところは国のプロジェクトと併存することが望ましい、ということになるだろう。


そして最後に、デジタルデータ化としてのグーグル化である。
保存スペースの問題や利活用の面から電子化を望む声が大きい一方で、
書籍の意味はそのコンテンツだけではなく、メディアやコンテクストにもあるのではないかという議論がある。
特に人文学的な方面からは、一種の「危機」として扱われることもある。
つまりそれは、書物がパラグラフ(カード)の単位に分解されていくことへの危機感である。
また、本シンポジウムで話に上ったように、研究対象として、本の物質的な側面から調査を行う*1こともありうるだろう。


以前「図書館のデータ化について思うこと」で述べたように、私は図書館において、とりわけ保存を主たる任務とする図書館においては、原本としての書籍(紙媒体)を保存した上で、利活用上、データ化を行うという併存が望ましいのではないかという立場をとっている。
以前のエントリーで詳しく述べなかった、「本は美術品」について少し述べたい。
最近、美術大学の友人*2と飲みに行く機会があったので、話していると彼の目線は本をまさに美術品として見ていた。
古い本や貴重なものに限られるのではない。
一つ一つの本が、ブックデザイナー、エディトリアルデザイナー、その他の手によって仕上げられているのだ。
そうでなければ、「なぜメディア研究か」(デザインは工藤強勝さん)の表紙をめぐって、
「ここで細明朝体!?」という言葉を聞くこともなかっただろう。*3
書籍という形を想定して、デザインされたこれらの「美術」はデータ化された瞬間に失われるだろう。
*4


無論、すべてを一箇所で保存していくことは難しい。
書物は無限に増加しうるからだ。*5
そういう場合には、日本全国の図書館トータルとして保存をおこなっていくことが必要なのではないだろうか。


私の考え方はある意味で過激な書物主義だ。
データと物質という意味で言えば、「金本位制」にも通じるかもしれない。
しかし、それが人間の創作物であり、一種公共性を持つものとして受け入れられているという点で、金とは異なる。


長尾先生が「何年かあとに技術的に可能になることを見据えて」いろいろ考えなくては、とおっしゃっていた。
確かに、技術の進展はめざましく、いろいろなことができるようになるだろう。
今回のシンポジウムでもそれを前提として電子化に賛成する意見は多く見られた。
しかし、それだけでは絶対に解決不能な問題があるはずだ。
書物の利活用は何も「データの検索」に留まるものではないのだから。


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長尾 真
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5 言語処理学会でお会いしたことがあります。

*1:今回言われたのは、江戸時代の生活本の手垢のつき方からその重要性をみていくというもの

*2:視覚デザイン系

*3:筆者自身はエディトリアルデザインに明るくないので間違いがあったらごめんなさい

*4:そういう意味ではNDLのカバーをはずすという保存方針は十分とは言えないが…

*5:ただし、電子書籍が一般化すればそもそも紙媒体として出版される量は減少するだろうから、今ほど問題になるかは分からない