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読書は人間の夢を見るか

平々凡々な社会人の読書と考えたこと。本文・写真についてはCC-BY-SA。当然ながら引用部分等の著作権は原文著者に属します。

"水平的な"キュレーション

どくしょ

一冊簡単な本を読んで読書会をしようという話になり、

キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書)

キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書)

を読んだ。


読み終わってから一週間ほどして、読書会。
こまった、何も頭に残っていない。
そんな時に思い出すのは、『読んでいない本について堂々と語る方法』*1である。
彼がその書籍の中で著したのは、読んでいない本について簡単にかたる方法ではない。
そもそも、読むとは何か、それについて述べるとはどういうことか、だ。
本の中で出てくる多くの人物は、本を(精密には)読んでいなくても、その関係性を知ることで、語ることを可能にしている。


そういう話が他にもある。
マングェルの『図書館 愛書家の楽園』*2に出てくる図書館司書*3は、本を読まない((少なくとも目次以上には))。
彼もまた、書物と書物の関係性の中で提供すべき本を知る。
その時、中身を読んでいてはかえって妨げになる。


キュレーションとはそう言うことではないかと思うのだ。
本来は、一つの「モノ」でしかないはずの作品を、立体的な網目の中に位置づける。
そして、提供するときにはそれらを一つの切り口から切り取って見せる。
もちろん、一つ一つのものに対する「審美眼」は必要だろう。
しかし、それは、アドホックに対象を紹介することではありえないはずだ。


では、佐々木氏がわざわざ本を書くほどの"新しい現象としての"キュレーションは如何にして可能なのだろうか。
直接に書いてあった記憶はないが、ストーリーとして描くことは難しくない。
"オープン"で"フラット"な情報流通の場(インターネット)が登場することで、
世の中には大量の情報があふれることとなった。
また、そこには様々な(情報の)圏域が現れることになる。
常人には「すべての」情報に目を通すことが不可能になるので、
多くの情報(それは各圏域に特化したものかもしれない)に目を通し、
有益と思われるものについて、付加的な情報を与えながらまとめていく「キュレーター」が新たな役割を担う。
それは"水平的な"キュレーションと呼べるのかもしれない。
素晴らしいことだ。


しかし、彼らの存在もまた"オープン"で"フラット"なものではないのか。
だとすれば、私たちにはキュレーターのキュレーターが必要になってしまう*4
そうではない。佐々木氏が文中で挙げる例が「著名人」であったことに象徴されるように、
少数者が権威を帯びるのではないか。
それでは、いままで、マスメディアがになってきた役割を少数個人が代替する(あるいは経路が追加される)だけではないか。*5
それは果たして私たちの望む未来と言えるのだろうか。


例えば、彼は、個人に対する信頼を情報の真贋を見極めよ、という。
個々の情報自体は裏が取れないが、今までその人物が発信してきた情報とその検証された真贋から人の信頼性を判断することは可能だというのだ。
一面真理をつく。しかし、一面ナンセンスである。
その人(新聞社・放送局)が発信したものだから大丈夫だ(すべて嘘だ)というのは、
マスゴミは」、「アカヒは」、といって、思考停止する某巨大掲示板住民*6と変わりがない。
「情報を批判的に見る」というのは、そう簡単なことではない。
それは「リテラシー」が文字を読むことのみならず「行間を読む」ことを要求するのと同じ程度には高度なことを要求する。


確かにこの本は眼に見える範囲のことを様々な例示(と必要とも思われない新語)をうまく(時に詐術的に)使いながら、
世界をモデル化することには成功している。
私たちはそれを「神話」と呼ぶのではないか*7
そういう意味で私はこの本の描かれ方にも不満がある。


しかし、そうした中であえてこの本に、
そしてこの本が持ち上げられているという状況に、意味を見出すのなら、
それは「独創」の相対化の極北に吹く風を感じることにあるのではないだろうか*8
その風を心地良く感じるにはまだ私は若すぎるようだ。*9

*1:http://www.amazon.co.jp/%E8%AA%AD%E3%82%93%E3%81%A7%E3%81%84%E3%81%AA%E3%81%84%E6%9C%AC%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E5%A0%82%E3%80%85%E3%81%A8%E8%AA%9E%E3%82%8B%E6%96%B9%E6%B3%95-%E3%83%94%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%BC%E3%83%AB/dp/4480837167

*2:http://www.amazon.co.jp/%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E9%A4%A8-%E6%84%9B%E6%9B%B8%E5%AE%B6%E3%81%AE%E6%A5%BD%E5%9C%92-%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%82%A7%E3%83%AB/dp/4560026378

*3:本来何に登場する人か失念したので

*4:読書会ではあえて挙げなかったけど、2chnaviとかは近い気もする

*5:マスメディア(ジャーナリズム)の本質は情報を速報することでも何でもなく、「選別する」ことだと考えています

*6:あ、僕がそうでないとはいいませんw

*7:雷がおちるのはゼウスが投げたからだ、というのと同じように

*8:うまく言語化できない。そして、逃げた。

*9:あまりにひどいレビューだと思って一日寝かせたが何も思い浮かばなかった。ご批判お待ちしております。