読書は人間の夢を見るか

平々凡々な社会人の読書と考えたこと。本文・写真についてはCC-BY-SA。当然ながら引用部分等の著作権は原文著者に属します。

ハゲを愛する人のためのブックガイドーハゲを取り巻く世界

寒い季節になって来ました。
ええ、いよいよ寒いです。
個人的にはマンチェスターユナイテッドがCL決勝トーナメントに進めなかったのは、ルーニーが植毛なんてふざけたことをしたからだと思っています。


最近いよいよヤバくなってきたから、
ということではなく、最近またハゲを取り巻く環境に興味を持ち始めています。
というわけで、ハゲを愛する方々のために書籍を何冊か紹介していきたいと思います。
注意:今回紹介する書籍はあくまでハゲを取り巻く環境やハゲの思いを描いたものを独断と偏見で選んだものです。生やしたい人はまた別途考えましょう。

ハゲを生きる―外見と男らしさの社会学

ハゲを生きる―外見と男らしさの社会学

ハゲ本、といえば紹介しないわけにはいかないのが、これ。
ハゲを社会学的に論じています。
社会学的にハゲを扱う、といってもいろいろな論点があるわけですが、この書籍ではジェンダー論が中心になります。
ジェンダー論というと、女性差別撤廃!みたいなイメージ(誤解)をもつ人もいるかと思いますが、「社会的な性」という意味で言えば、男性性も当然そこに該当するわけです。
他にも社会学的な理論を引きつつハゲを取り巻く環境・社会を上手いこと整理しているように見受けられます。
厳密さはともかく、論点を知りたい方におすすめ。


ところで、この本の中で「ハゲ差別を糾弾する主張は、いささかの笑いの要素も含まない形で存在しうるとは現在のところ考えにくい」(p.3)とあるのだけれど、この状況を打破していくのが、私の夢でもあります。
例えば、ハゲが、ファショナブルにカツラをかぶれる社会、あったっていいじゃないですか。


ぼくらはみんなハゲている

ぼくらはみんなハゲている

次の一冊はドキュメンタリータッチ。
というか、ドキュメンタリーの書籍化。
第一章ではハゲを生きる人々にインタビューを敢行していきます。
しかし注目は第二章、いわゆるハゲ産業に鋭く斬り込んでいきます。
何がハゲを作っているのか。
何がハゲを物悲しい物にしているのか、その真相の一片がここにあります。*1


ところで、カツラ一個の原価は2万5000円から3万5000円程度(当時)であることが明らかにされています。ただし、頻繁に買い換えるものでもないので、単価を高くしないとやっていけない、と。
ということは逆転の発想で、ファッションとしてのカツラが成立するならば単価を下げつつ、利益もあげられるはずではないのか、と思うのですが。


禿頭礼讃

禿頭礼讃

ハゲは海外でも持てるという言説もありますが*2、ここでは見事に打ち砕かれます。
筆者はフランス人ジャーナリスト。若くして男性型脱毛症、つまりいわゆるハゲ、の診断を受けることになり、闘いがはじまります。
クスっとした笑いの数々。しかし、それを読んだ後についてくる共感。
人間の業というものを感じさせてくれます。
ハゲの問題は洋の東西を問わない!


そして、著名なハゲの対談集がこれ。

誇大毛想

誇大毛想

出たときに思いました。これは誰が読むのだろう、と。
ハゲに関係のない人は読まないだろう。
かといって、はげている人はこれを買えるのか?
しかし、後から考えてみれば、上で挙げた『僕らはみんなはげている』にも参考文献として挙げられているし、後述のハゲ本でも言及されています。
ハゲにとって、どうどうとハゲを語ってくれる人というのはある意味で貴重なのかもしれません。
ハゲにとってなぜそれが苦しみなのか、ということを考えつつ、一方で、明るい話題を提供してくれます。


最後にこれを紹介しておきます。
ハゲを治す、という方向には走らないといっておきながら何ですが、
ハゲという運命に直面した一人の男性の奮闘ぶりを見るに適した一冊だと思います。
結局、生やそうとすれば、怪しげな育毛剤やシャンプーではなく、
薬(フィナステリドなど)と徹底的な生活習慣の改善が求められるということになります。
髪のためにここまでやるんだよな、人は、っていうのが身にしみてわかります。


そんなこんなで様々なことが起きた2011年ももうすぐ終わりますが、来年もよろしくお願いします。
良いお年を。

*1:一方訴訟リスクはかなり高かったはず!?

*2:例えば、井上章一『ハゲとビキニとサンバの国―ブラジル邪推紀行』新潮社, 2010.などで言及されているもの。未読。