読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

読書は人間の夢を見るか

平々凡々な社会人の読書と考えたこと。本文・写真についてはCC-BY-SA。当然ながら引用部分等の著作権は原文著者に属します。

私たちの時代のサイン Emojiはなぜ言葉よりも人を動かすものでさえありえるのか

Signs of our times: why emoji can be even more powerful than words

Vyvyan Evans, Bangor University

※本稿は、The Conversationに掲載された"Signs of our times: why emoji can be even more powerful than words"の全訳です。著者であるVyvyan Evans氏の許可を得て翻訳しました。*1

 

毎年、オックスフォード英語辞典-英語の世界的な権威の一つ-は過去12ヶ月において傑出して目立ってきた単語を「今年の単語(Word of the Year)」に選んでいます。単語は、その語がどれだけ頻繁に使われたか、その語が私たちの生きる時代の何を明らかにしているか、といったことについての綿密な分析に基づき、注意深く選ばれます。過去の事例には、最早古典となった「vape*2」、「selfie*3」、「omnishambles*4」を含んでいます

しかし、2015年の言葉は、全くもって言葉ですらなかったのです。”Emoji”-正確には”喜びの涙を流す顔”の絵文字-だったのです。

以前は、思春期の子どもが ブツブツ言っているのと文字通り等しい物として、軽蔑の目で見られていましたが、Emojiは、いまやメインストリームに乗ってきたように見えます。もし、それが本格的な言語ではなかったとしても、それは、少なくとも、私たちの多くが、多くのタイミングで用いるものになっています。以前の記事で私がお伝えした研究によれば、事実、英国でスマートフォンを使う大人の80%がEmojiを使っています。

しかし予想通りのことながら、オックスフォード英語辞典の決定は、いくつかの方面に驚きを与えています。Hannah Jane ParkinsonはThe Guardianに書いた記事で、決定に「馬鹿げている」の烙印を押しました。Parkinsonのために言うと、そして、同じように考えている「言語の権威」がたくさんいると思うのですが、それは「馬鹿げて」います、だって、Emojiは言葉ですらないんですから。彼らは言うでしょう、間違いなく、これは人気取りだ。オックスフォード英語辞典は実はこんなにナウいんだぞ、と見せることだけに心を傾けている賢いマーケティング担当の幹部が夢見てるんだ、と。

しかし、Parkinsonはまた、より今年の単語にふさわしい、Emojiがたくさんあるということ観点からの批判もしてします。彼女が提案しているEmojiのうち、そのタイトル*5に対して見合っているものは、ネイルペイントのEmojiと茄子(又はナス)のEmojiというたった2つだけです。

的を射ない

しかし、これらの批判は両方とも的を射ていません。Emoji-「絵の文字」を意味する日本語から来ている(2013年版になってオックスフォード英語辞典に入った単語です) -は、多くの面で言語的なものです。しゃべり言葉や手話は、私たちがメッセージをやり取りし、他の人の精神的な状態や振るまいに影響を及ぼし、私たちの市民的な、社会的な状況に変化をおこすこと可能にします。私たちは、結婚のプロポーズをするために、そしてそれを確認するために、また、口喧嘩をして、離婚をするために言語を使います。しかし、Emojiも同じような機能を果たしているのです-それは、逮捕に繋がることすらあるんです!

今年の早い時期に起きた珍しいケースについて考えてみましょう。17才のアフリカ系アメリカ人が、Facebookに警官のEmojiとそれに向けたいくつかの拳銃のEmojiが入った公開の投稿をしました。ニューヨーク地方検事は、ニューヨーク警察に対し、「テロの脅威」の疑いで逮捕状を発行しました。Emojiは害を引き起こす、あるいは、それを扇動する脅威に等しいと主張されたのです。

間違いなく世界初のemojiテロ犯罪の容疑で、大陪審は、最終的にその10代の若者を起訴しませんでした。しかし、ポイントは、一連のEmojiが、言語と同様に、メッセージを伝え、同時に、それを実行する手段を提供することができるということです-このケースで言えばニューヨーク警察に対して武器を取る容疑がそれにあたります。

私たちの宝物である英単語と同様に、Emojiは、思考の、そして潜在的には、説得の強力な道具です。言語と同じように法廷において、あなたに対する証拠になりうるし、なることもあるでしょう。つまりは、Emojiの言語的な性質を認めようとしない人々は、人間のコミュニケーションが、私たちの誇るべきこの新しいデジタルの世界でどのように行われているか、原理的に誤解しているのです。

Emojiの進化

ふたつ目の抗議-オックスフォード英語辞典にもっと誇るべき他のEmojiがあること-もまた、デジタルの領域で言語がいかにして進化しているかということについて誤解しています。

Emoji perfection from www.shutterstock.com

一つには、最近の研究では、一日に世界で用いられるEmojiの60%弱が様々な種類の笑顔や悲しい顔で構成されているということを示唆されています。この典型的なEmojiは、現在、英国のEmoji使用の約20%を占めています(過去12ヶ月間に4倍に増加しました)。それが今日、最もよく使われているEmojiの一つであることには議論の余地がありません。その意味から言えば、「喜びの涙を流す顔」のEmojiは、私たちの每日のデジタル生活で使っている主な方法を完璧に適切に表現しています。

しかし、この特筆すべきEmojiは、より深い理由から適切であるともいえます。Emojiは、テキスト上での会話において、会話の相互作用におけるイントネーション、表情、そしてボディランゲージに値します。Emojiは、従来的な意味での単語ではない一方で、それにもかかわらず、重要なコンテクスト上の合図を示しており、これによって、私たちは、個人のデジタルのテキスト表現を適切に区切ることが可能になるのです。そうでなければそれは感情的に乾いたものになってしまうでしょう。

重要な事には、Emojiは私たちが話しかける人からの共感を得ることを助けてくれます-それは、効果的なコミュニケーションで要求される中心的なことです。それは、私たちのテキストの解釈のされ方に影響を与え、よりよい感情的な表現を行うことを可能にします。

いくつかのやり方で、Emojiは言葉よりも強力だという議論をすることさえできるかもしれません。「喜びの涙を流す笑顔」のEmojiは、効果的に、複雑な感情の状況を伝えることができます、これを言葉で伝えようと思えば、幾つかの単語が必要ですが-ただ一つの、比較的シンプルな文字で伝えることができるのです。それはうまいこと瞬間的な感情的な共鳴を呼び起こすことができます。そうでなければ、言葉の連なりの中で失われてしまうようなものなのです。

場合によっては、言葉を置き換えられるEmojiがあります-これは、言語学者が、コードスイッチングと呼ぶものです。より極端な例-「不思議な国のアリス」のような文学作品の翻訳のような-においては、それは、言葉としてのみの機能を果たしており、そして、文法的な構造を与えられています。Emojiの表現力には本当に議論の余地がありません。

だから、オックスフォード英語辞典のマーケティング上の思惑を不人情にも批判する人もいるかもしれませんが、私は彼らを賞賛しています。私たちは、ますます、Emojiの時代に生きているのです。それは、まさに文字通り、私たちの時代のサインです。言語がここにあり続けることに疑いはありません-偉大な英単語は壊されてはいませんし、すぐに壊されてしまうことはないでしょう。しかし、Emojiはデジタルのコミュニケーションにおけるギャップを埋めてくれます、そして、その過程で私たちはコミュニケーションがよりうまくなるでしょう。

The Conversation

Vyvyan Evans, Professor of Linguistics, Bangor University

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.

*1:原文はCC-BY-NDで公開されています。以下注は訳者によります。

*2:電子タバコ

*3:携帯電話の自撮り

*4:失敗などで特徴づけられるすべてがめちゃくちゃな状態

*5:Parkinson氏の記事のタイトルは"Oxford Dictionary names emoji 'word of the year' - here are five better options"(オックスフォード英語辞典はEmojiを「今年の単語」に-5つのよりより選択肢)というもの。