三浦九段の出場停止と連盟の電子機器取扱いに関する経緯
本日(12日)、日本将棋連盟から驚きの発表が行われました。
第29期竜王戦七番勝負挑戦者の変更について|将棋ニュース|日本将棋連盟
丸山忠久九段との挑戦者決定戦を制し、
第29期竜王戦に出場が決まっていた三浦弘行九段が出場しないこととなり、
更に今年いっぱいの出場停止処分が課せられるというのです。
また、その後の報道*1で、
夏ごろから三浦九段の離席が多く、対局中にスマートフォン等を使って不正(具体的にはコンピュータ将棋ソフトの使用のことと思われる)を行っているのではないか、との声が上がった。
11日に三浦九段に聞き取りを行ったが、満足な説明が行われず、
休場の意向を示したが、期日とされた本日(12日)までに届け出が行われなかったため、今回の処分に至った、
ということがわかりました。
また、一部の棋士のTwitterによれば、一致率*2の高さが噂となっていたとも読めます*3
三浦九段は、「ぬれぎぬ」であるとしています。
近年、コンピュータ将棋ソフトの進歩は目覚ましく、
スマートフォン上で動かしても相当の強さがある*4と考えられるほか、スマホ経由のリモートで自宅PCを動かす等の方法でより精度の高い情報を得うることから、
対応が検討されていました。
時系列で整理すると以下のようになります。
夏ごろ:離席が多い等の指摘?
8月:電子機器持ち込みに関する意見伺いが始まる?*5。
9月8日:竜王戦挑戦者決定
9月26日:持ち込み規制の方向で棋士の意見を聞く。反対意見もあり。この時点では規制は11月に発表の予定。*6
10月5日:持ち込み、外出の禁止を12月から施行することを発表。竜王戦では金属探知機を使用することに両者合意と報道*7
10月11日:三浦九段から聞き取り
10月12日:処分公表
いかにも対応がちぐはぐで、拙速であるように感じます。
三浦九段が否定しているにもかかわらず、
状況証拠のみでグレーな裁定を下すことは、ご本人の不利益はもちろん、
今後の棋界にとって様々な意味で禍根を残すものとなるでしょう。
仮に(本当に万が一)なんらかの証拠があるが、隠している場合であっても、
処分のみを公表することは、不信を生むだけであって、
竜王戦だけでもすんなり終わらせた方が合理的であるように思います。
聞き取りのタイミングももう少し前のタイミングにはならなかったのか。
悪しき前例を作り、すべての棋士に疑いの目を向けさせ、
タイトル戦というハレの舞台を戦う棋士を万全の状態から遠ざける。
どうにも、ココセの悪手を指し続けているような気がします。
三浦九段が不正を働いたとは思いません。*8
一方で、広い意味で電子機器にどう対応するのか、という問題はあるのでしょう。
将棋連盟が棋界とファンのため、賢明な判断を下されることを望みます。
*1:スマホの将棋ソフト使い不正か 三浦九段「ぬれぎぬ」:朝日新聞デジタル 将棋連盟:三浦九段、対局中不正か…離席しソフト利用疑い - 毎日新聞
*2:ソフトの最善手と一致した指し手の率
*3:大平武洋 on Twitter: "離席という事になっていますが、言われていたのは「一致率」しかし、それで黒認定はいいのかは、個人的には疑問です。"
*4:スマホで最強の将棋ソフトを動かすとどれくらいの強さですか? | やねうら王 公式サイト
*5:2ch名人 日本将棋連盟、新規定を通知 「対局階での電子機器使用禁止」西尾明 on Twitter: "対局フロアでの電子機器(携帯、スマホ、タブレット、PC等)の使用を禁止、とこの度新しく規定したというのは誤報です。すでに昨年定められていますが、いまやタブレットで記録を取ったりもしているので無理があります。より適した規定のために議論するといった感じですね。"
*6:将棋対局中、スマホは禁じ手? 不正行為防止へ規制検討:朝日新聞デジタル
*7:将棋対局中、スマホはロッカーに 次の手検討の不正封じ:朝日新聞デジタル
*8:仮になにかあったとすると弁護士云々という対応は不自然な感じもある。