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読書は人間の夢を見るか

平々凡々な社会人の読書と考えたこと。本文・写真についてはCC-BY-SA。当然ながら引用部分等の著作権は原文著者に属します。

ドイツ:ソーシャルメディアに対する法執行の強化(2017/4/19一部更新)

ドイツで、フェイクニュースを取り締まる法案が提出されるのではないか、ということで、大変大きなニュースになっております。

ドイツ うそのニュースに最大約60億円罰金の法案 | NHKニュース

 

読んでみますと、もちろんフェイクニュースを射程に入れたものではあるようなのですが、法律自体はSNS上の法執行の強化、ということを前面に押し出しているようです。

BMJV | Artikel | Verbesserung der Rechtsdurchsetzung in sozialen Netzwerken

少し時間もありましたので、試訳を行ってみました。

(訳のクオリティが低いので訂正していただけるとありがたいです。なお、このほかにテレメディア法の改正と施行期日に関する規定があります)

 

 簡単にまとめれば、報道の通り、ドイツ国内において一定以上の規模を有するソーシャルネットワーク事業者に対し、違法情報に対する苦情処理手続を定めさせるものです。 

 苦情処理規定には、明らかに違法な情報を24時間以内に、それ以外のものでも7日以内に削除又はブロッキングする手続を含むものとされています。また、違法な情報はコピーも含めて措置されるものとされています。

 そのほか、苦情処理に関する報告書の作成の義務や国内に一定の代理人を置く旨も規定されており、これら手続の導入義務、報告義務等の規定に反した場合には最大500万ユーロ(60億円)の過料が科せられるものとなっています。

そういうわけですので、フェイクニュースが新たに犯罪になる、というわけではなく、その流通を効果的に防止するために新たに負のインセンティブなどを設けたものだとおもいます。

 

日本のプロバイダ責任制限法との関係でいうと、この法案は、特定の刑法典上の犯罪に対象が限定されていること、そしてもちろん、新たなサンクションが導入されている点が大きな違いといえます。また、国内で対応が可能であるように代理人を置かせたり、対応する人員については語学的な研修・サポートを行わせるなど、グローバルなプレーヤーへの対応、という観点も強く感じたところです(しかし、こういうことするとドイツからのアクセスは遮断(撤退)、とかならないのかと少し疑問に思ったり)。

ドイツにも、プロバイダ責任制限法と同じような意味でテレメディア法というのがありますが、運用上、プロバイダ側に厳しそうなことも多い印象でした*1表現の自由の考え方として「国家による自由」の考え方が比較的強い、ということとも関係しているのでしょうか(あといつもながらにジャーナリズムの特別感)。

 

なお、管見の限りでも、プロバイダ等に対し、何らかの責務を負わせ、これを履行しない場合に罰金等を科す例にニュージーランドの有害デジタル通信法があると思いますが、これは裁判所等の外部の機関の命令を実施しなかった場合の措置であるのに対し、本法案では、自主的な手続が実行されないということ自体に対して過料を科すことができるようにも見えます*2。(この点につき、当初法案では、そのように読めていたところ、法案説明資料中で24時間ないし7日以内の削除等の義務に一度違反したからといって、その構成要件を満たすものではないとされたようです。*3

以上は素人考えであてにならないので、どなたか教えていただけると幸いです。

いずれにしても今後の動向が注目されるところです。

 

--以下訳--

ソーシャルネットワークにおける法執行の改善に関する法律(ネットワーク法執行法)

第1条 範囲
(1)この法律は、利用者が、任意の内容を、他の利用者と交換し、共有し、又は一般に公開することを可能にするインターネット上の営利のプラットフォーム(ソーシャルネットワーク)を有するテレメディアサービス提供者に適用する。サービス提供者自らが責任を負う、ジャーナリズム編集を経て形成された提供物のプラットフォームは、この法律の意味でのソーシャルネットワークとしてみなされない。


(2)ソーシャルネットワークの提供者は、当該ソーシャルネットワークの国内における利用者が2万人を下回る場合には、第2条から第3条までに規定する義務を免除される。

(3)第1項の意味での、違法な情報とは、刑法第86条、第86a条, 第89a条, 第90条, 第90a条, 第90b条, 第91条, 第100a条, 第111条, 第126条, 第129条から 第129b条まで, 第130条, 第131条, 第140条, 第166条, 第184b条, 第184d条, 第185条から第187条まで, 第241条又は第269条の構成要件を満たすものをいう。*4


第2条 報告義務
(1)ソーシャルネットワーク提供者は、そのプラットフォーム上の違法コンテンツに係る苦情の処理に関するドイツ語の報告書で、第2項に規定する内容を含むものを四半期に一度作成し、連邦官報並びに自身のウェブサイト上で、1四半期の終了から少なくとも1月の間公開しなければならない。自身のウェブサイト上で公開された報告書は、容易に見つけられ、直接アクセス可能で、かつ常に利用可能でなければならない。

(2)報告書は少なくとも以下の事項を含まなければならない。
1.ソーシャルネットワークの提供者が、プラットフォーム上における犯罪行為の防止のために行っている各取組の詳述
2.違法情報に係る苦情の送信のメカニズム及び違法情報の削除及びブロッキングのための判断基準の説明
3.報告期間中に受信した違法上に関する苦情の数(苦情相談所*5の苦情、ユーザーの苦情に従った分類及び苦情理由に従って分類)

4.苦情への対応を所掌するユニットの組織、人材の配置並びに技術的及び言語的能力並びに苦情への対応を所掌する人員への訓練及び補助
5.苦情相談機関がこの業界団体に含まれるか否かに関する説明を含む業界団体への加盟状況
6.判断の準備のために外部機関に相談された苦情の数
7.報告期間中に当該情報の削除又はブロッキングに至った苦情の数(苦情相談所及び利用者の苦情並びに苦情理由によって分類されたもの)
8.ソーシャルネットワークにおける苦情の受領から違法情報の削除又ブロッキングまでの時間(苦情相談所及び利用者からの苦情、苦情理由、並びに「24時間以内/48時間以内/1週間以内/それ以上」の期間に従って分類されたもの)
9.申立人並びに当該情報の利用者に対する苦情に関する判断についての通知の措置

 

第3条 違法なコンテンツにかかる苦情の処理
ソーシャルネットワークの提供者は、違法情報に係る苦情の処理について、第2項及び第3項に規定する効果的かつ透明性のある手続きを有さなければならない。提供者は、利用者に対し、違法情報に対する処分に係る苦情を送信するための、容易に区別でき、直接にアクセス可能で、常に利用可能な手続を提供しなければならない。

(2)手続において、ソーシャルネットワークの提供者は以下を保証しなければならない。
1.遅滞なく苦情を承知したことを表明し、情報の違法性及び当該情報が削除又はブロッキングされるべきであるか否かを審査すること。
2.明らかに違法な情報を、苦情を受けてから24時間以内に削除する、又は当該情報へのアクセスをブロックすること(ソーシャルネットワークが所管の法執行機関と明らかに違法な情報の削除又はブロッキングについてより長い時間をとることで合意している場合には適用しない)。
3.各違法情報を、苦情の通知を受けてから7日以内に削除し、又は当該情報へのアクセスをブロックすること。
4.削除の場合には、当該情報を証拠のために確保し、この目的のため、10週の間、国内で保存すること。
5.申立人及び利用者に遅滞なく決定について知らせ、及びその決定に対する理由を挙げること。

更に、プラットフォーム上にある違法情報の全ての複製を遅滞なく削除し又はブロッキングすること。

(3)手続は、各苦情及びこの救済のために採られた国内における措置を文書化することを保証しなければならない。

(4)苦情に係る処理は、ソーシャルネットワークの経営陣によって、毎月の検査を通じて、監督されなければならない。寄せられた苦情の処理において、組織的に不十分であることについては遅滞なく取り除かれなければならない。苦情に対応することを任された人員には、ソーシャルネットワークの経営陣によって、定期的に、少なくとも半年に一度、ドイツ語の語学研修及びサポートサービスが提供されなければならない。

(5)第1項の手続は、第4条で指定する行政官庁によって、認可を得た機関によって監視されることができる。


第4条 過料に関する規定
(1)故意又は過失により以下の行為を行った者は秩序違反として扱われる。
1.第2条第1項第1文に反して、報告を行わず、正確性を欠き、不完全なものであるか又は期限を遵守せずに行う若しくは、正確性を欠き、不完全なものであり、所定の方法ではなく又は期限を遵守せずに公開した者。
2.第3条第1項第1文に反し、国内に居住するか又は本部を置く苦情相談所又は利用者の苦情の処理に係るそこで指定された手続を有さず、又は正確性を欠く若しくは完全でない方法でしか有していない者。
3.第3条第1項第2文に反し、そこで指定された手続きを提供していないか又は正しい方法で提供していない者。
4.第3条第4項第1文に反し、苦情の処理を監督しない又は正しく監督していない者。
5.第3条第4項第2文に反し、組織的な不十分さが改善しない又は期限を遵守して改善しない者。
6.第3条第4項第3文に反し、訓練又はサポートを提供しない又は期限を遵守して提供しない者。
7.第5条に反し、国内登録代理人又は国内受領資格者を指名しない又は期限を遵守して指名しない者。


(2)秩序違反は、第1項第7号の場合には50万ユーロ以下の過料、第1項の他の場合には500万ユーロ以下の過料を科すことができる。秩序違反法第30条第2項第3文が適用されなければならない。*6

(3)秩序違反は、国内で行われない場合においても適用され得るものとする。

(4)秩序違反法第36条第1項第1号の意味での行政官庁は連邦司法省である。連邦私法消費者保護省は、過料手続の開始に際し及び過料額の決定に際し、連邦内務省、連邦経済及びエネルギー省及び連邦交通及びデジタルインフラ省との合意を得て、過料当局の裁量の行使に関する一般的な管理原則を公布するものとする。

(5)行政官庁が、削除されていない又はブロッキングされていない情報が第1条第3項の意味で違法であると判断しようとする場合には、行政官庁はあらかじめ、違法性について、司法上の決定を得なければならない。過料の決定に対する意義に関する決定を行う裁判所は、権限を有する。先決的判決の申請は、ソーシャルネットワークの意見と併せて裁判所に送付されなければならない。申請に対しては、口頭の審理無しに決定を行うことができる。決定は、最終的なものであり、行政官庁を拘束する。

 

第5条 国内送達代理人
ソーシャルネットワークの提供者は、この法律に基づく過料の手続における行政官庁、検察庁及び所管の裁判所並びに民事訴訟手続における所管の裁判所に対する送達のため、国内送達代理人を遅滞なく選任しなければならない。国内法執行機関の情報照会のため、国内受領代理人を選任しなければならない。

 

第6条 経過規定

(1)第2条に規定する報告は、この法律の施行から第二四半期後を第一期とする。
(2)第3条に規定する手続きは、この法律の施行から3月以内に導入されなければならない。

 

*1:ドイツにおけるプロバイダ責任法理の展開 : 危険源の設置者か、有益な表現の場の創出者か : HUSCAP

*2:ニュージーランドの有害デジタル通信法 ―オンライン上の有害なコンテンツに関する包括的規制―」<http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_10016376_po_02680006.pdf?contentNo=1&alternativeNo=>

*3:Heiko Maas: Facebook kann sich entspannen | ZEIT ONLINE

*4:例えば、違憲団体(ナチスとか)の宣伝、侮辱、名誉毀損、犯罪への扇動など

*5:Beschwerdestellen

Internet-Beschwerdestellen - klicksafe.de などを見ると日本でいうインターネットホットラインセンターなどが該当しそう

*6:秩序違反法の当該条文は法人の場合について規定しており、過料上限の10倍を上限とする旨、すなわちこの場合では、法人については上限が5000万ユーロとなる