往復方式と片道方式による答弁時間の違い―予算委員会における首相答弁を例に―
暇ですね。
暇なときには、Rとかをいじってみましょう。
ということで、練習問題として、国会会議録で何か分析ができないか考えてみました(簡単なものに限る)。*1
さて、国会の予算員会質疑では、持ち時間というのが決められています。
○○さんは何分以内、というような形で。
ところが、この持ち時間のカウントの仕方が、衆議院と参議院では違うのです*2。
衆議院は、往復方式、といいまして、質問した時間も答弁している時間もすべてカウントされます。
一方、参議院は、片道方式といって、質問をしている時間だけが算入されるのです。すると、衆議院では(厳しい質問を受けたくないとすれば)長めに答弁をすることで、時間を消費できる、というわけです。
実際、答弁回数の比較から「一回の質疑に対して、ある程度答弁を引き延ばして答えている衆議院と、必要最小限の短い答弁を行う参議院となっていることがうかがえる」とするものもあります*3。
そこで今回は、2017年~2018年の予算委員会における安倍首相の答弁を対象にその文字数を分析してみることにしました。
安倍首相に限定したのは、時期によって答弁者が異なることによる影響を排除するためと、操作の簡便のためです(笑)。
もちろん文字数なので、時間数を正確に反映したものではありませんし、事後に書き言葉に修正されている点にも留意する必要があるでしょう*4。
基本的な統計量を示すと以下のようになります。
院 | 最小値 | 平均値 | 中央値 | 最大値 | 標準偏差 | N |
---|---|---|---|---|---|---|
衆議院 | 11 | 424.2 | 362 | 2456 | 304.7 | 1479 |
参議院 | 8 | 351.7 | 289 | 2184 | 279.3 | 1623 |
また、ヒストグラムを重ね合わせてみると下図の通りです。
上図表を見る限り、参議院の方が文字数が少ない傾向にありそうですね。
一応、ウィルコクスンの順位和検定*5をやってみると以下の結果。
Asymptotic Wilcoxon rank sum test
data: num_Lower and num_upper
W = 1380000, p-value = 5.38e-13
alternative hypothesis: true mu is not equal to 0
帰無仮説は棄却できそうですね。
というわけで、今回の結果としては、一応、参議院の方が答弁が短いものが多そう、という風に理解したいと思います。
初心者の手習いですので間違いがあればご指摘ください。
上記について私又は所属する組織の見解ではないということを念のため申し添えます。
*1:会議録APIの操作についてはkaigirokuライブラリを使用させていただきました。ありがとうございました。amatsuo/kaigiroku: README.md
*3:木下健「過去 20 年間の衆参予算委員会における与野党対立構造の分析」『同志社政策科学研究』2012.9 https://doors.doshisha.ac.jp/duar/repository/ir/15533/019014010007.pdf
*4:会議録を用いた分析の限界については以下も参照。岡田洋平「日本語コーパスとしての「国会会議録検索システム検索用API」―計量的研究の精緻化・深化の可能性―」『新潟大学教育学部研究紀要 人文・社会科学編』2018 http://dspace.lib.niigata-u.ac.jp/dspace/bitstream/10191/50680/1/11