EU TSM規則のネット中立性-欧州議会調査局資料から
日本ではどちらかと言うと通信の秘密の方にいってしまいがちですが、
欧州、米国ではネットワーク中立性が何かと話題ですね。
欧州では、10月にネットワーク中立性にも関連するいわゆるTSM規則が採択されたみたいです。
欧州議会調査局の方が簡潔に要点をまとめてくださっていますので、要約だけご紹介します*1。
本文はリンクから御覧ください。
The EU rules on network neutrality: key provisions, remaining concerns
ネットワーク中立性に関するEUのルール 重要な条項、残る懸念
Tambiama André MADIEGA
SUMMARY:要約
ネットワーク中立性は、本質的には無差別性の原理として、つまりは、インターネットサービスプロバイダー(ISP)のネットワークを通じた全ての電気通信が平等に扱われることの要求として説明することができよう。長い議論の末、2015年10月27日、欧州議会は、欧州連合におけるオープンなインターネットアクセスのセーフガードに関する新しい規則等を含む、電気通信単一市場(TSM: Telecom Single Market)規則を採択した。
TSM規則では、エンドユーザーがEUのインターネット上において、選択したコンテンツにアクセスし又は配布する権利が重視され、ISPに対し、全てのインターネットトラフィックをエンドユーザーの権利を保護する方法で平等に扱わせるための無差別性の義務を課している。しかし、ISPはなお、無差別性の原則に対し、例外的措置や合理的なトラフィック管理の措置を実施することが許されている。ISPには、イノベーティブなサービス、すなわち「専門サービス(specialised services)」(遠隔医療サービス(例えば、離れた距離から行われる保健サービス)のなどがこれに類する)を提供することの可能性が承認されているが、これらのサービスにおいては通常、サービスの品質と、トラフィックの管理が要求される。また、ISPとエンドユーザーは、インターネットアクセスサービス提供上の(例えば、価格、分量、速度についてのような)商業契約を自由に結ぶことができる。しかしながら、ISPが、専門サービスや商業契約をもちいて、無差別性の原則を迂回させないようにするため、セーフガード条項が同時に実行に移される。
妥結されたテキストは、多くの論者によって、EUにおけるネットワークの中立性を確かにするための偉大な一歩として見られているが、一方で、未解決の抜け穴と曖昧さが致命的なままいくつか残されている。とりわけ、合理的なトラフィック管理、専門サービス及びゼロ・レーティング*2のような価格差別的な慣行に関する規則をいかにして実装するかということに関して、懸念が表明されている。EU全体におけるアプローチが別々のものになってしまうことを避けるため、共通ガイダンスが必要とされている。
Tambiama André MADIEGA, The EU rules on network neutrality: key provisions, remaining concerns, EU Pariament Think Tank website, 2015.11.5 http://www.europarl.europa.eu/thinktank/en/document.html?reference=EPRS_BRI(2015)571318
なお、問題点としては、例えば、ベストエフォートで提供される(通常の)インターネットサービスと広範な「専門サービス」の定義との間に空白があることなどが紹介されています(専門サービスに関しては、代替できないことを示すためのテストをクリアしないといけないけれども、詳細なガイドラインはない、と。)。
ルール自体は2016年4月に発効するけれども、議論は終わらないよ、ということのようです。