読書は人間の夢を見るか

平々凡々な社会人の読書と考えたこと。本文・写真についてはCC-BY-SA。当然ながら引用部分等の著作権は原文著者に属します。

焦がれるものは

「野球わかるんか?って言われたら、当然のごとくカープの話が始まるんですね!」

広島に赴任した後輩が、驚きを語ってくれた。

プロ野球にもチームはいろいろあるし、大リーグや高校野球もある。

それでも広島で「野球」といえばカープのことだ。

なんの前置きもなく、今日の試合での若手のエラーの話が始まり、それを肴に杯を傾ける。

 

祖父も例にもれず、カープファンだった。

いや、以前に優勝した際には、会社で胴上げされたといっていたから、

その中でも、とりわけ熱烈なファンだった、ということなのかもしれない。

毎晩、ウイスキーを片手に、カープの試合を見て、

誰に見せるわけでもない、記録を取り続ける。

つまらないミスや気力のない試合などしようものなら、

「ハー!解散せぇ、解散じゃ」と罵倒する。

それを、毎日、毎日繰り返す。

健やかなる日も、病める日も。

富める日も、貧しき日も。

 

年齢的なものなのか、カープが負け続けているからなのか、

元気をなくしていた祖父のため、友人に無理を言って譲ってもらった

サインバットは、当時のスター・緒方選手のものだった。

 

その緒方選手もとうに引退して、監督になって。

黒田選手や新井選手は一度出て行って、戻ってきた。

球場もボールパークへと建て替わった。

10年も前に亡くなった祖父が知っているチームとは、

ずいぶんとメンバーがかわってしまったけれど、

生きていたら、間違いなく、その瞬間を見届け、喜びを爆発させていただろう。

東京ドームで、本通りで喜びを爆発させていたファンの姿に、

「解散せい」と言いながら、チームを愛し続けた祖父の姿を重ねてしまった。

 

広島中がコイ焦がれたチームに、待ち焦がれた瞬間が訪れたことを

心からお祝いしたい。

 

 

そして、CSには我がチームも出ることを、

そしてよい勝負をすることを祈っています。