法案審議でどのような言葉が使われているか―郵便法等改正案を題材に―
ある日、ふと思い立ちました。
国会では、「プロバイダ」についてどのような議論が交わされているのだろうか、と。
本来であれば、一つ一つ丹念に見ていって、議論の詳細を負うべきでしょうが、ぱっと上手く視覚化したい。
国会会議録API*2を使って、「プロバイダ」という語がつかわれた発言をひろい、ワードクラウドを作ってみてはどうかと考えたのです。
結果はこんな感じ*3。
直近議論になっているネット上の誹謗中傷の問題と関連して、発信者情報の開示なんかがトピックになっているのかなー、ということがわかります。
で、ここまでやってみると欲が出るわけですね。
ということは、ある法案の審議に際してどんな言葉が使われているのかを調べることもできるのではないか。(それなりに有意義ではないか)
そこで、今回は、第203回国会で審議された郵便法等の改正案についてみてみました。
郵便法等の改正案は、働き方改革(収益悪化)等を理由として、日本郵便から郵便の土曜配達取りやめ等の要望があったことを契機として、検討が進められたもので、一昨年からすでに提出が取りざたされていたものの、例のかんぽ生命の不適切販売問題なんかがあって、国会提出がのびのびになっていたものです。
ざっくり言えば、郵便のユニバーサルサービスを維持していくためにそれに求められる水準を少し落としましょう、というようなものです。概要は注のリンクをご覧ください
*4。
さて、今回対象にしたのは、第203回国会(昨年秋の国会)の総務委員会で、郵便法が審議された全4回。本会議については、その他の法案等に関する発言と切り分けるのが、やや難しいので、今回は外しました。
さらに、会議録冒頭の会議録情報と、委員長の発言(議事整理がほとんど)除いています。
ワードクラウドを書いてみるとこんな感じ。
時節柄、コロナ関係の発言などもあるようですが、やはりユニバーサルサービスや、労働問題としての側面をうかがわせるような言葉(社員、労働条件)などがみられるように思います。
せっかくなので、KH Coderという分析ツールも使って、もう少し詳細な分析をしてみましょう。
ユニバーサルサービスという言葉が、どのような場面で使われるか見てみると、一緒に使われている言葉の上位は次の5つ。
1 | 金融 |
2 | 維持 |
3 | 提供 |
4 | 郵便 |
5 | 確保 |
4位に郵便が入っており、維持、確保、提供といった言葉が並んでいますが、目を引くのは、1位が「金融」という言葉だということです。実際の質疑を見てみると、金融のユニバーサルサービスについては、日本維新の会の議員の質疑で取り上げられていることがわかります。会派との共起分析を行ってみると(ややみにくいですが、)下のようになります。
左端に金融―日本維新の会・無所属の会があるのがわかります。
共起分析からは、(当たり前ですが)野党各党の質疑に「大臣」という言葉が登場していることもわかりました(見解を問うているものと考えられます)。
触り始めたばかりでまだわからないことが多いのですが、この辺り分析を深めていけば、各会派の法案に対する考え方なども見えてくるかもしれないと感じました。
もう少し勉強しつつ、ほかの法案審議についても分析を試みてみたいと思っています。
(追記)
ユニバーサルサービスが何とともに議論されているか、ということであれば、ユニバーサルサービスとの関連語で調べていくべきだったな、と後から気づきました。
これは、今回の法改正で出たトピックが端的にクラスタ化されていて面白いのではないでしょうか。
左の薄緑は労働問題、真ん中にユニバーサルサービスの維持・確保、上部にはかんぽの不適切販売問題、下部から右下にかけては民営化の在り方に関連しているように思われます。
ひとまず今回は。