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読書は人間の夢を見るか

平々凡々な社会人の読書と考えたこと。本文・写真についてはCC-BY-SA。当然ながら引用部分等の著作権は原文著者に属します。

Wi-Fiが飛び交う世界、でも、インターネットには未だに海底ケーブルが必要

Wi-Fiが飛び交う世界、でも、インターネットには未だに海底ケーブルが必要

Nicole Starosielski, New York University

※本記事はThe Conversationに掲載された記事"In our Wi-Fi world, the internet still depends on undersea cables"(2015.11.3)の翻訳です*1

 

海底通信ケーブルの近くでのロシアの潜水艦の活動に関する最近のNew York Timesの記事は、冷戦の政治を掘り返し、私たちみんなの拠り所となっている水に沈んだシステムへの認識を広めました。

海底ケーブルが海を横断するデータトラフィックのほぼ100%を運んでいるということに気づいていた人は多くありませんでした。これらの線は、海底のまさに底に設置してあります。それらは、庭のホースと大体同じくらいの厚さで、世界中のインターネット、電話、そしてテレビさえも大陸の間を光の速さで運んでいます。一般的なケーブルは、一秒に数十テラビットもの情報を運ぶことができます。

私の著作The Undersea Network(『海底のネットワーク』)のための調査を行っている間に、私は、私たちみんなが海を越えてemailから銀行の情報までありとあらゆるものを送るために頼っているケーブルが、大部分は統制されず、そして無防備であるということに気づきました。それらは、たったいくつかの企業(米社SubCom、仏社アルカテルルーセントを含む)によって敷設されていて、しばしば、狭い通り道に沿って送り込まれていますが、海洋の広大さが、しばしばケーブルに保護を与えています。

2015 map of 278 in-service and 21 planned undersea cables. Telegeography

ワイアレスからは程遠い

インターネットトラフィックが海、それも深海生物と熱水噴出孔に囲まれた海、を通じてやりとりされているという事実は、多くの人々がインターネットに抱いているイメージとは正反対のものでしょう。空中で信号をやりとりするために衛星やWi-Fiを発展させてきたんじゃないの?クラウドの世界にやってきたんじゃないの?海底ケーブルシステムは過去のもののように聞こえます。

現実には、クラウドは実際に海の下にあるのです。時代遅れに見えるかもしれませんが、光ファイバーケーブルは現実には、最先端のグローバル通信技術なのです。ケーブルは、光を使って情報をエンコードし、天候に影響を受けませんから、衛星と比較してデータをより速く、より安価に運ぶことができるのです。ケーブルは、大陸内も縦横無尽に走っています―ニューヨークからカリフォルニアに向かうメッセージもまた光ファイバーのケーブルを通じて送られるのです。これらのシステムは、当分の間、空中の通信手段に置き換えられることはなさそうです。

A tangled cable caught by fishermen in New Zealand.

脆弱性のあるシステム?

ケーブルシステムの一番大きな問題は、技術的なことではありません―人間です。ケーブルは地中や水中、電柱の間を走っているので、ケーブルシステムは、私たちと同じ空間に生息していることになります。結果として、私たちは、いつも、誤ってそれを壊してしまうのです。地域開発のプロジェクトは地上の回線を掘り起します。船乗りは、ケーブルにイカリを下します。そして、潜水艦乗組員は、海の下のシステムを正確に特定することができるのです。

最近のメディア報道のほとんどは、脆弱性に関する疑問によって占められています。グローバルな通信ネットワークは本当に混乱の危険にさらされているのでしょうか。これらのケーブルが切られた時何が起こるのでしょうか。ロシアの潜水艦やテロリストによる妨害行為の脅威を心配しなければならないのでしょうか。

この問題には、黒か白か、では答えられません。どの個別のケーブルも、常にリスクにさらされていますが、それは、何らかの妨害者から、というよりも断然船乗りや漁師からの方がありそうなものです。歴史を通じて、混乱の最も大きな原因を一つ上げるなら、故意ではなく イカリやネットを落としてしまうことでした国際ケーブル保護委員会 は、こうした破壊を防ぐために何年も活動を続けています。

An undersea cable lands in Fiji. Nicole Starosielski, CC BY-ND

結果として、今日のケーブルは、人間の脅威が最も集中している海岸の端では、鉄の鎧にカバーされ、海底の下に埋められています。これは、一定の防御になります。深い海では、海洋のアクセス不能性が、大部分ケーブルを守ってくれます-それは、薄いポリエチレンの膜にカバーされれば足りるくらいのものです。深い海では、ケーブルの切断が相当に起こりにくいということではなく、主な形態の干渉が起こりにくい、ということです。海はとても広く、ケーブルは細い、だから、あなたがその上を走って横切る可能性は高くない、ということです。

海底ケーブルの歴史においては、妨害は実際には珍しいものです。発生することは確かにある(近年ではない)けれども、それらは不釣り合いな形で公表されています。第一次世界大戦時の ドイツによる太平洋のファニング島のケーブル局の襲撃は多くの注目を集めます。そして、2008年、国のインターネットの70%を遮断し、何百万人かに影響した、エジプト・アレクサンドリア沖でのケーブル破壊という妨害についての憶測がありました。しかし、平均して年に200回起きているいつもの失敗について聞くことはほとんどありません。

冗長性はいくらかの防護に

事実問題として、これらの線を監視することは不可能なくらいに難しいことです。ケーブル会社は、最初の電信線が1800年台に敷設されて以来、1世紀以上もそれを試みています。しかし、海洋はあまりにも広大で、回線は単純にあまりにも長いのです。致命的に重要な通信ケーブルの付近のあらゆる場所にやって来るすべての船舶を止めることは不可能だろう。私たちは、極端に長い「通行禁止」ゾーンを海洋に設けなければならないし、それ自体、経済を大いに傷つけることになります。

300に満たないケーブルシステムが 全世界の海洋を超えたトラフィックのほぼすべてを運んでいます。そして、これらは多くの場合、小さな崩壊が大きなインパクトに繋がる狭い圧力点を通っています。各ケーブルは、桁外れの量の情報を運ぶことができますので、手に乗るようなシステムに国全体が寄りかかっていることも珍しいことではありません。多くの場所で、インターネットの大きな帯域を取り出すには、たった数本のケーブルを切断することでしかないのです。正しいケーブルを正しい時間に切断すれば、世界中のインターネットトラフィックを数週間か場合によっては数か月にわたって妨害することができるでしょう。

グローバルな情報トラフィックを守っているものは、システムにある種の冗長性が組み込まれているという事実にあります。実際のトラフィックよりも、ケーブルの容量は大きいので、それが壊れた際には、情報は自動的に他のケーブルを通じて迂回します。多くのシステムは米国につながっていて、また、インターネットインフラの多くはここに置かれていますので、単一のケーブルの故障が、アメリカ人に気がつくような影響を引き起こすことは考えにくいのです。

Surfacing.in is an interactive platform developed by Erik Loyer and the author that lets users navigate the transpacific cable network. CC BY-ND

どのケーブル回線一本も、切断の影響を受けやすいし、それはこれからも続くでしょう。そして、そのための唯一の解決策は、より多様性のあるシステムを構築することなのです。しかし、現状では、個別の企業はそれぞれ自身のネットワークに目配せしているけれども、グローバルなシステムを全体として強靭なものにするための経済的なインセンティブも管理機関もないのです。心配すべき脆弱性があるとすれば、これこそがそれにあたります。

The Conversation

Nicole Starosielski, Assistant Professor of Media, Culture and Communication, New York University

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.

*1:元記事はCC-BY-NDで公開されています。本稿の翻訳については、筆者であるNicole Starosielskiニューヨーク大助教授の許可を得ました。