「この世界の片隅に」生きるということ
「この世界の片隅に」見てきた。
声の主演はのん(能年玲奈)。
感想をTweetすることができなかった。
付け加えるべき言葉が見つからなかった。
舞台は戦前から終戦に至るまでの広島、呉。
主人公の北條すずは、普通の人、だ。
少しぼーっとしたところがあって、絵が好きで。
身近にいるあの人みたい、そう感じさせるような人物。
ときにコミカルさをもって、ときに切なさをもって、
描き出される主人公、そしてその反省は、魅力に満ちている。
「戦争」に関する映画、という言葉から想起されるような
暗闇に塗りつぶされたものではない。
今を生きる私たちとも共通する普遍的な感情を共有する
等身大の人物であればこそ、彼女や彼女の
家族たちに自らやその家族を重ねあわせる。
それはきっとそこにあった生を「理解する」という営みであった気がする。
私の祖母は、あの大きく立ち上った雲の下にいた。
女学生だった祖母も動員される中で、あの瞬間は訪れた。
ガラスの破片がたくさん刺さった。
町に出れば、皮がむけた人々が、「幽霊のように」手を前にたらして、
さまよっていたという。
少し、前に出ていたら、少し時間がずれていたら。
祖母も、そして今の私も選び取られなかった現在となっていたことだろう。
彼女の目を通してみた、美しく、残酷な世界。湧き上がる感情。
そして「この世界の片隅に」、「普通のひと」として生きることの意味。
言葉は思いに足りない。