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読書は人間の夢を見るか

平々凡々な社会人の読書と考えたこと。本文・写真についてはCC-BY-SA。当然ながら引用部分等の著作権は原文著者に属します。

「この世界の片隅に」生きるということ

この世界の片隅に」見てきた。

こうの史代原作、片渕須直監督・脚本。

声の主演はのん(能年玲奈)。

 

感想をTweetすることができなかった。

付け加えるべき言葉が見つからなかった。

 

舞台は戦前から終戦に至るまでの広島、呉。

 

主人公の北條すずは、普通の人、だ。

少しぼーっとしたところがあって、絵が好きで。

身近にいるあの人みたい、そう感じさせるような人物。

 

ときにコミカルさをもって、ときに切なさをもって、

描き出される主人公、そしてその反省は、魅力に満ちている。

「戦争」に関する映画、という言葉から想起されるような

暗闇に塗りつぶされたものではない。

今を生きる私たちとも共通する普遍的な感情を共有する

等身大の人物であればこそ、彼女や彼女の

家族たちに自らやその家族を重ねあわせる。

それはきっとそこにあった生を「理解する」という営みであった気がする。

 

私の祖母は、あの大きく立ち上った雲の下にいた。

女学生だった祖母も動員される中で、あの瞬間は訪れた。

ガラスの破片がたくさん刺さった。

町に出れば、皮がむけた人々が、「幽霊のように」手を前にたらして、

さまよっていたという。

少し、前に出ていたら、少し時間がずれていたら。

祖母も、そして今の私も選び取られなかった現在となっていたことだろう。

 

彼女の目を通してみた、美しく、残酷な世界。湧き上がる感情。

そして「この世界の片隅に」、「普通のひと」として生きることの意味。

言葉は思いに足りない。